花弁のアスコルビン酸の謎とは…? 横川暖さん研究インタビュー

植物の花弁に含まれるアスコルビン酸を探究する横川さん。横川さんが行っている研究やアスコルビン酸の謎、趣味や目標についてインタビューを行いました。

アルセド 本日は取材を受けてくださりありがとうございます。早速ですが、研究内容について説明をお願いします。

横川 はい、さまざまな植物の花弁について、なぜアスコルビン酸(ビタミンC)が存在するのか、あとはその生合成についての研究をしてます。

実験中の横川さん
実験中の横川さん

横川 このアスコルビン酸の働きについて説明しますと、植物は光合成をしますよね。そのときにいろんな物質を酸化させてしまう活性酸素というものが生じてしまうんです。そこで、このアスコルビン酸が活性酸素を水へと変えて無害化し、ほかのさまざまな成分に対する抗酸化作用として働きます。

アルセド アスコルビン酸に抗酸化作用があるというのは初耳でした。なぜ葉ではなく花弁に着目したのでしょうか?

横川 すでに葉のアスコルビン酸についてはいろいろなことがよく調べられていて、かなりの数の先行研究があるんです。でも、花弁については利用されることが少ないせいか、あまり研究が進んでいないからというのが一つの理由です。あと、単純に葉での作用とは別に花弁での作用が気になったからというのもあります。正直後者の方が理由としては大きいですね。

アルセド ありがとうございます。葉のアスコルビン酸は葉緑体に貯蔵されるようですが、花弁の場合どこに貯蔵されているんでしょうか?

横川 それはまだ分からないんですよね。葉の場合、たしかにミトコンドリア(呼吸により育成に必要なエネルギーを生成するための器官)でアスコルビン酸が生合成されて葉緑体に貯蔵されることは分かっているんですが、花弁には葉緑体がないので別の器官が貯蔵しているのか、それとも葉で生合成されたアスコルビン酸が送られてきているのか、それは今後調べていきたいですね。

アルセド なるほど、では花弁と葉ではアスコルビン酸の量というのは違うものなんですかね?

横川 いえ、驚くべきことにどちらも同じくらいなんです。たとえば花弁のアスコルビン酸の量が減ったら葉のアスコルビン酸も減って、その逆も同じです。葉のアスコルビン酸と花弁のアスコルビン酸量の増減は同期しているんですね。

ぴく まだまだ分からないことがたくさんあるんですね。ちなみにこの研究、面白い点というのはどういったところにあるんでしょうか?

横川 調べれば調べる程不思議なところが湧き出てくるところですかね。先にも言ったと思うんですが先行研究が全く無いんです。だから調べることすべてが新しいことでして、そういったところにはとてもワクワクしますね。

ぴく 逆に研究で苦労しているのはどういったところでしょうか?

横川 やっぱり花の咲く期間がとても短いところですかね。自宅がある大阪と研究室がある島根を往復するんですが、花はだいたい1ヶ月くらいで萎れてしまうんです。だから、毎回一発で成功させないといけないっていうプレッシャーがありましたね。

研究に用いたツツジ
研究に用いたツツジの写真

ぴく それはプレッシャーになりますね。研究を始めたきっかけというのはどういった経緯があるんでしょうか?

横川 今高校3年生なんですが、1年生までは植物が苦手だったんです。ほら、芋虫とかが付いてるじゃないですか。でもあるとき、自分が植物についてよく知らないなと思って、知らないまま嫌うのはよくないなと。そこから植物について調べ始めました。

アルセド なるほど、食わず嫌いを直そうとして始めたのですね。

横川 はい、そうなんです。食わず嫌いはなるべくしないようにしてるので(笑)

アルセド 研究以外にしている活動があれば教えて下さい。

横川 コントラバスですかね。中学生になって、吹奏楽部に入ってコントラバスに一目ぼれしたんです。そこから始めました。

アルセド 中学生から始めたんですね。では、横川さんが思うコントラバスの魅力は何だともいますか?

横川 やっぱり腰から伝わる振動を感じつつ、楽器と一体になって演奏できるところですかね。あとは吹奏楽でもオーケストラでも、なんならジャズでも、エレキベースに持ち替えれば幅広い楽曲に対応できて、さらには現代に残る唯一のヴィオラ・ダ・ガンバ属(楽器を脚で支える弦楽器のこと)の楽器という意外と稀有な楽器という歴史的な面白さも大好きです。

ぴく コントラバスってかなり幅広く演奏できる楽器なんですね。大会に出場されたりはしているんですか?

横川 はい、毎年吹奏楽コンクールに出ていて、最終的には関西大会銀賞までいきました。あと、管弦打楽器ソロコンテスト大阪狭山大会予選で金賞をいただいて、本選では銀賞でした。また、中学生・高校生のためのコントラバス・ソロコンテスト全国大会でも同じく銀賞をいただきました。

ぴく 管弦打楽器の大会で金賞とっちゃうんですか。それはすごいですね。

横川 やはり、コントラバスというのは普段ベースを担う楽器でして、トランペットやフルートなどの花形の楽器と戦うコンテストではやはり不利と言わざるを得ないですね。だからこそ、大会で金賞・銀賞を頂けたのは嬉しかったです。

アルセド いまコントラバスの画像見ているんですが、すごく大きいですし、重いですよね?

横川 そうですね、だいたい10㎏はしますね。重いのは重いですけど、もう慣れちゃったのもあって今では普通に担げます。

ぴく 意外と慣れるものなんですね。

アルセド では、そろそろ次の質問に行きますね。将来の夢について教えていただきたいです。

横川 そうですね、やっぱり最終的には植物生理学(植物学のうち、植物の生理機能を研究する領域のこと)の研究者になりたいっていうのはあります。大学はやっぱり植物生理学に関する研究室に行きたくて、植物学の方面に強いお茶の水女子大学をを志望しています。

アルセド この先も植物生理学に関連する研究を続けていくんですね。最後に、Larva06の読者にメッセージをお願いします。

横川 研究のきっかけって、見逃しているだけで身の回りにたくさんあると思うんです。それを見逃さず、どんどん突き詰めてみる。じつはそういったところが偉大な研究の始まりだったりするので、普段からそういった視点を持ってほしいと思います。それはいつか偉大な成果となって社会に還元されると思うので。

アルセド ありがとうございます。今回は植物の花弁におけるアスコルビン酸の役割と生合成という研究についてお話を伺いました。本当にありがとうございました。

横川 ありがとうございました。