裁判傍聴から社会を見つめる!清水裕太郎さん研究インタビュー

小学生の頃から裁判傍聴に通い、現在は法教育における裁判傍聴の有効性を調査する清水さん。清水さんの活動や法の魅力、法律に興味を持ったきっかけについてインタビューを行いました。

なのめーとる。 本日はよろしくお願いいたします。最初に、自己紹介をお願いします。

清水 清水裕太郎と申します。日本大学豊山高校の2年生です※1 。法律や裁判が好きで、小学6年生の頃から裁判傍聴に通っています。最近は特に法教育との関連に着目して、友人を裁判傍聴に連れて行き、感想などの情報を収集しています。

また、高校生法学研究会という学生団体を立ち上げ、代表をしています。その他にも、日本大学法学部の高大連携で科目履修生として、大学の授業も受講しています。

※1:学年は2024年3月時点

なのめーとる。 ご友人を裁判傍聴に連れて行くことで、どのような検証をされているんでしょうか?

清水 私がずっと気になっているのは、法教育において、裁判傍聴という手段が有効かどうかです。

実際に友達を連れて行った後に感想を聞くと、「今まで知らなかった裁判の世界を初めて知った」といった言葉をよくいただくので、裁判傍聴は法教育には有効だと考えています。

それを実証するために、現在も引き続き調査を行っています。

なのめーとる。 裁判傍聴に行くことと、ニュース等で裁判に関する情報を得ることでは、どのような違いがあるとお考えですか?

清水 裁判傍聴に行くと、狭い法廷の中ですぐ目の前に被告人がいるため、ドラマとか映画とかとも違い、独特の空気感や緊張感を感じます。それらはニュース等では伝えられない、現地でしか味わえないものではないかと考えています。

なのめーとる。 なるほど。民事裁判と刑事裁判、大きく2つがありますが、清水さんはどちらをご覧になるんですか?

清水 僕は刑事裁判をよく見ます。民事裁判は当たり外れが大きいため、基本的には刑事裁判の方が分かりやすいです。特に大麻や覚醒剤、窃盗、詐欺などは見ていて何が争点なのか分かりやすいため、それらを見ることが多いです。

なのめーとる。 傍聴に行かれた中で、印象に残っている裁判や考えさせられた裁判はありますか?

清水 2月上旬に千葉地方裁判所に行った際は、裁判員裁判の殺人とその他の余罪がある事件の判決がありました。

それは、心神耗弱※2 が適用されて少し罪が軽くなった事件でした。心神耗弱による減刑は社会的にも世間的にも注目されているため、傍聴してよかったですし、印象に残っています。

※2:心神耗弱とは、精神疾患や薬物の摂取等によって、行為の善悪に関して正常な判断をする能力や、それに従って行動する能力が減退している状態のこと。刑法上、心神耗弱が認められた場合は減刑の対象となる。それらの能力を一切欠いている状態である「心神喪失」よりは軽い状態を指す。

なのめーとる。 世間でたびたび話題になっている分野でもありますが、心神耗弱による減刑について、清水さんはどうお考えですか?

清水 例えばこの前見たケースは、殺人と覚醒剤使用と公用文書等毀棄※3 の3つの罪の裁判でした。

この被告人は、覚醒剤を常に摂取していないと精神的にも安定できない精神状態にあったため、事件当時も覚醒剤を使用していました。そのため、覚醒剤が自身の正常な判断を妨げたと判断され、心神耗弱による減刑となりました。

言い方を悪くすると、罪を重ねたことによって罪が軽くなっているケースだったんです。

心神耗弱や心神喪失に対して、そういう規定はなくすべきだという主張を目にする機会もありますが、個人的には絶対あるべきだと考えています。なぜなら、色々な立場の人に寄り添うのが法であり、今の法制度だと思っているからです。

※3:公用文書等毀棄罪とは、公的機関が使用のために保管している文書や電磁的記録を毀棄した場合に問われる罪。

千葉地方裁判所

※千葉地方裁判所(清水さん撮影)

なのめーとる。 裁判傍聴などの活動や法律に関する勉強の中で、苦労している点や難しい点はありますか?

清水 法学は正解がない学問だと感じています。新しいケースが出てきても、裁判所が判断を出すまでの間は答えがありません。終わりがなくて奥が深いところが面白いと思う反面、難しいと思うこともあります。

また、法律の解釈も難しいです。

例えば、電気が物に入るのかという問題があります。

実は「物」の定義が刑法と民法で異なります。民法では、五感で触知しうる個体や液体、気体が物(有体物)とされるため、電気は物には該当しません。

一方、刑法上では、実際にコンビニの外にあるコンセントに勝手にケーブルを挿して充電した時には、窃盗罪に問われます。窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に問われる罪です。

刑法だと電気は財産性のある物として認められるのですが、民法だと物には該当しないのです。このように、法律によって解釈が違うところから、言葉で表すことの限界を思い知ることもあります。

なのめーとる。 盗電の法的な解釈は難しいんですね。知りませんでした。

清水さんは小学生の頃に傍聴に初めて行かれたとお聞きしましたが、何かきっかけがあったのですか?

清水 きっかけは小学5, 6年生の時に、クラスの友達とお互いふざけていた場面で、「バカ」や「死ね」「殺す」といった言葉を言われたことです。

それを言われて、何か言い返したいなと思い、調べていたら、刑法第199条に殺人罪があると知りました。

殺人を犯したら、死刑または無期もしくは5年以上の懲役になるということを知り、そこから色々調べていくうちに法律って面白いなと思いました。

法律を調べるうちに、実際に裁判傍聴に行くようになり、それも面白かったため、今に至るまで惹かれています。

アルセド きっかけが個性的ですね。ちなみに、「殺す」と言われたときに「それは脅迫罪だよ」などと仰られたんですか?

清水 それが実は至らないところなんです(笑)。今考えたら絶対脅迫罪なんですよね。脅迫罪は刑法第222条で「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知」したというのが構成要件になっているため、絶対脅迫罪なんです。

しかし、その時の僕はまだ、実際に殺したら殺人罪だとしか言えなかったんです。めっちゃ悔しいポイントです。

なのめーとる。 面白いですね。では改めて、法学という分野の好きなところについて教えてください。

清水 難しい質問ですね。法律は小学生の頃から、ずっと好きと言ってきたのですが、自分でも何で好きなのかずっと分からないんです。

ただ、法律を読んでる時とかは、言葉で社会全体のルールを定めているところが面白いと思います。

人が2人以上いると必ず何かが起こるんですよね。良いことにしろ悪いことにしろ、何かしらの出来事が起こるわけです。

それは人が増えていったり、人々の環境やバックグラウンドが多種多様なものになったりすることで複雑化していきます。

そんな人たち全員の中で、統一的な文章としての「法」があるので、法の存在意義もとても尊いものだと思っています。

また、その法を作ることや、法があること自体がすごいことだと感じています。

国民全員が従っているルールがあることは、それだけで十分すごいことだと思います。そこが特に好きなポイントです。

なのめーとる。 ありがとうございます。清水さんから熱意が伝わってきました。確かに、多様性の世の中で一つの法があることはすごいことですね。

東京地方裁判所

※写真奥の建物が東京地方裁判所。手前の赤レンガの建物が法務省旧本館。(清水さん撮影)

アルセド 法律を勉強しているが故の弊害などは、あるのでしょうか?

清水 普段、フィクションの映画やドラマ、ゲームなども、全部法的に考えてしまうという点があります。

以前、友達にとあるゲームをおすすめされました。それをプレイした後に、ゲーム内のどの行為が何の犯罪になるのかを全部レポートにまとめ、友達に渡したことがあります。

そういう見方を分かってくれる友達と分かってくれない友達がいるので、そこは難しいです。

そのように、世の中を法的な考え方でフィルターを置いて見てしまうところは弊害かもしれません。自分の中では面白いと思っていますが。

なのめーとる。  分かります。私も、日本刀の研究をしている友達と一緒に映画を観るのですが、それぞれ見ている世界が全然違うんです。私は「本が全部聖書に見える」と言い、友達は「棒が全部刀に見える」と言います。

同様に、清水さんにとってはバトルゲームなどは、攻撃が殺人罪や傷害罪に思えるのでしょうか?

清水 そうなんです。しかし、バトルゲームの場合は、単に殺人罪なのか傷害罪なのか以外にも考えなければならない点があります。

例えば、スプラトゥーンというゲームがありますよね。

スプラトゥーンを考えるにあたって難しいのは、基本的にキャラクターがイカやタコであり、イカやタコたちに人権があるのかという点なのです。人権があり「人」として認められたら、犯罪が成立する余地があります。

まず、現実世界と同様、イカに人権が無かったら、イカがイカを殺しても犯罪にはなりません。また、人がイカを殺した場合でも殺人罪にはなりません。人がイカを殺した場合、他の人が飼っているイカだったら器物損壊になりますが、自然にいるイカだったらまた別です。

では、このイカは人とみなしていいのかどうかというところから考えなければなりません。イカが買い物をしてたり言語を話していたり、自分の意思で何かをしてる時点で、人とみなすことができるのではないかという仮定のもとで議論を進めることもできると思うんです。

それらに加えて、インクを壁に塗る行為は器物損壊だとか、そういったことも考えられます。

そのように色々な捉え方ができるので、本当に果てしない、ある意味自分の中での思考ゲームだと思います。

なのめーとる。 スプラトゥーンからそこまで深く考えることができるなんて、とても興味深いですね。

清水 全ての行為を全部それで見ると、少し気持ち悪い人になってしまうので、読書などをする際に、法律というフィルターをあえてつけてみるときと外してみるときっていうのを自分の中でも無意識に使い分けています。

純粋に作品を楽しんでるときもあれば、一歩引いて普段の法律キャラで見ているときもあり、それらを無意識に使い分けてるのでそこには自分でも驚いています。

アルセド 自分も似たような感じです。魚が専門なので、例えばファインディング・ニモとかを観ていると、「この魚は新種だな」と思う時があります。

なのめーとる。 それぞれで見ている世界が違うのは面白いですね。

清水さんは、裁判傍聴以外に趣味はありますか?

清水 裁判所巡りも好きです。全地方裁判所制覇が目標なのですが、まだ50個のうち、6個ぐらいしか行けてないんです。

また、読書や映画鑑賞、バイオリンを弾くこと、音楽を聴くことも好きです。

なのめーとる。 想像以上に多趣味でびっくりしました。裁判所巡りや裁判傍聴には、どれくらいの頻度で行かれてるんですか?

清水 裁判所は基本的に平日しか空いてないため、裁判傍聴とかは行けるときに行くくらいです。

しかし、本当に差し迫って行きたいという時は、放課後に急いで行って、その日の最後の枠の裁判を見ることもあります。

あとは、春休みなど、平日に学校が休みの日に裁判傍聴に行きます。

裁判所巡りは、近場だったら簡単に行けるのですが、遠いところは旅行のついでに行くことが多いです。

以前友達と大阪に旅行に行った時は、裁判所に行くために、裁判所の近くのホテルを取りました。

なのめーとる。 チャンスを見つけて、裁判所に行かれているんですね。

最高裁判所

※最高裁判所(清水さん撮影)

なのめーとる。清水さんは今後の進路について、どうお考えですか?

清水 大学は法学部に入って、そのままロースクール※4 に進学して、弁護士になりたいと思っています。法の研究もしたいため、弁護士として実務をしながら、法学者として法の研究もしたいというのが将来の夢です。

※4:ロースクール(法科大学院)を修了すると、司法試験の受験資格を得られる。修士号・博士号を得られる、大学院の法学研究科とは異なる。

なのめーとる。 なるほど。将来はどのような分野の研究をされたいのでしょうか?

清水 今僕が興味を持っているのは、法社会学という学問分野の中の、法が社会に与える影響や法教育の部分です。

法社会学は、まだ研究があまり多くはないので、将来は法社会学を更に深く探究したいです。

なのめーとる。 素敵ですね。応援しています。

清水さんは話し方がしっかりされているため、きっと素敵な弁護士さんになられるんだろうと思います。もし私が捕まった時は、弁護をお願いしたいです。

清水 ぜひ!!弁護させてください!

アルセド そもそも捕まらないようにしてくださいね。

なのめーとる。 そうですね、気をつけます(笑)。次に、Larva06の読者にメッセージをお願いします。

清水 僕は昔から法が好きで、好きなことをずっと掘り下げてきたタイプの人間なので、ぜひ読者の皆さんも、好きなことを好きと胸を張って言えるようになって欲しいなと思います。

研究というかたちでなくとも、自分が納得するぐらいまで興味を掘り下げて行くことは、きっと何かに繋がります。

なのめーとる。 ありがとうございます。最後に、清水さんが代表をつとめる「高校生法学研究会」について教えてください。

清水 高校生法学研究会は、法に興味のある高校生たちが集まって、法を学ぶ団体です。2024年3月には、大学の先生をお呼びして、法学部の紹介などを行うイベントを実施しました。イベントの他にも、勉強会など法律についての知識を深める活動を行っています。

会員募集中ですので、興味のある方はぜひご参加ください。

なのめーとる。 ありがとうございます。本日はありがとうございました。

清水 ありがとうございました。

清水さんが代表をつとめる「高校生法学研究会」の詳細はこちら