木星の縞の物質濃集に迫る・・・!天文学とエコノミクスの二刀流 フィゲロアビクトル龍馬さん研究インタビュー
木星の縞模様に関する物質濃集について研究しているフィゲロアさん。研究の面白い点、課外活動や、今後の目標についてインタビューしました。
みゃお:お忙しい中、取材にご協力いただきありがとうございます。早速ですが、自己紹介をお願いします。
フィゲロア:フィゲロアビクトル龍馬です。高校3年生で、木星の物質濃集に関する分光観測による解析と、緯度ごとの木星の物質量比の解析を行っています。
みゃお:木星の物質濃集というテーマについて、どのような研究目的がありますか?
フィゲロア:目的は2つあります。1つ目は、木星の縞模様がどのようにして生じているのか完全に理解されていないため、それを明らかにすることです。もしメタンやアンモニアなどの物質がどのようなところに濃集しやすいのか解明できれば、縞模様がどのようにして形成されているのかについての理解に繋がると思っています。2つ目は、先ほどの研究で得た知見を地球の大気環境に応用することです。
みゃお:なるほど。研究を始めたきっかけについて教えてください。
フィゲロア:東北大学主催の天文学研究プログラム「もし天」に参加し、4人のグループで木星解析に取り組みました。このプログラムでの活動を原点として、本格的に研究を開始しました。もし天のプログラム自体は1週間のみでしたが、その後も議論を重ね、日本天文学会ジュニアセッションなどで発表を行いながら、現在も研究を進めています。
みゃお:1週間で研究を仕上げることはかなり厳しいことだと思いますが、フィゲロアさんが特に難しいと感じたことはありますか?
フィゲロア:まず、得られたデータ(生データや補正済みのデータ)から木星の特性を解釈することが困難です。また、議論には仮説が必要不可欠ですが、緯度ごとの物質分布を東西方向に均一と仮定するなど、仮定の正確性が不透明な点も課題の一つです。
みゃお:仮説自体が間違ってる可能性がある中で議論を進めるのは難しそうですね…では次に、研究の面白い点を教えてください。
フィゲロア:僕たちの研究は新規性が高いです。先行研究では木製の分光データを1次元的に解析することがほとんどですが、僕たちは分光計測を緯度ごとに行い、木製の表面を2次元化しました。独創的なアプローチを用いることが、未知の現象の発見につながる可能性を秘めていると感じています。
みゃお:確かに、新規性の高い研究は面白いと感じますね。では次に、宇宙に興味を持ったきっかけを教えてください。
フィゲロア:保育園の時に、天文学者カール・セーガンが監修した「コスモス」というドキュメンタリー番組を観て、興味を惹かれ宇宙が好きになりました。そこから、宇宙や天文学についての本を読むようになりました。
みゃお:進路についてはどう考えていますか?
フィゲロア:国公立大学への進学を目指しています。その後は海外の研究室で経験を積み、日本の大学で教員として研究を進めたいと考えています。また、宇宙関連のビジネスで起業にもチャレンジしてみたいです。
みゃお:なるほど。では次に、解明したい謎はありますか?
フィゲロア:観測によると、ビッグバン後の最初の5億年の間に、天の川銀河と同程度の質量を持つ銀河が多数形成されていることが明らかになっています。しかし、現在広く知られている宇宙の標準モデルでは、これらの銀河の形成を説明することが難しいのが現状です。シミュレーション天文学を用いて宇宙初期の銀河を研究し、標準モデルの問題点を解明したいと考えています。
みゃお:ありがとうございます。宇宙以外に興味のある分野はありますか?
フィゲロア:天文学以外では、経済学に興味があります。先日、第18回エコノミクス甲子園に参加し、ビジネスケースのプレゼンテーション部門で僕のグループが優勝しました。また、日本代表選考では、補欠代表にまで残ることが出来ました。
みゃお:ビジネスケース以外にどのような課題がありましたか?
フィゲロア:ビジネスケースとは別に筆記ラウンドがありました。出題された問題は理論的な経済学に関するものが多く、普段あまり勉強していない分野だったので、難しく感じました。
みゃお:そうなんですね。ところで、今フィゲロアさんが着ているパーカーに UnFiction と書かれてありますが、UnFiction とは何ですか?
フィゲロア:UnFiction とは、SF をベースとした宇宙開発を進めるため、「宇宙逆算思考ワークショップ」などを開催している学生団体です。高校生・大学生を含め、40人ほどで運営しています。
みゃお:面白そうですね。天文学やエコノミクス以外には、どのような活動に取り組んでいますか?
フィゲロア:実は、平和活動も行っています。広島で若者が企画・運営するイベント「Peace Night Hiroshima」のイベント企画を行ったことがあり、現在は海外からの観光客向けの原爆ドームの英語ガイド「Youth Peace Volunteer※」をメインで活動しています。
※ (参考URL)https://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20230925/4000023677.html
みゃお:ありがとうございます。最後に、Larva06 の読者へメッセージをお願いします。
フィゲロア:自分の好きな分野について勉強・研究を行っていく中で、必ず壁にぶち当たることがあると思います。ですが成長するために、むしろその壁にどんどんぶち当たってください。
壁にぶち当たることで、メンタルが強くなり、どのようにすれば壁を乗り越えられるのかと考えるようになります。このプロセスが研究の好循環を生み出すことにつながると僕は考えています。
行き詰った時こそ、そのままどんどん突き進んでください。
また、新しく勉強する分野として、僕はいつも天文学を勧めています。その理由は、天文学が他のあらゆる学問につながっていると考えているからです。経済学であったり宇宙ビジネス、さらには宇宙法学などにも関連しています。もし何か新しい研究をしたいと考えているのであれば、ぜひ天文学も選択肢の一つとして検討してみてください。
みゃお:本日はお忙しい中、ありがとうございました。
フィゲロア:ありがとうございました。