培養を通じて、菌の「生き様」を明らかにしたい!兼平修太さん研究インタビュー

現在大学生(取材時高3)で、高校時代は微生物間の相互作用や緑膿菌コロニーに関する研究を行っていた兼平修太さん。高校時代の研究の内容や魅力、今後の目標などについてインタビューを行いました。

フィゲロア お忙しい中、取材にご協力いただきありがとうございます。早速ですが、自己紹介をお願いします。

兼平 兼平修太です。高校3年生です※1 。高校では微生物の研究に取り組んでいました。高校時代の研究は主に2つ。1つは微生物間の相互作用、もう1つはコロニーの観察から発見した緑膿菌に関する研究です。

※1:取材時高校3年生。2024年5月現在は大学生。

フィゲロア 緑膿菌が光を当てるとガスを発生させるという研究ですか?

兼平 はい。緑膿菌コロニーから発生する泡に関する研究です。この研究は、JSEC※2 の最終審査に進出し、優秀賞を受賞しました。

※2:JSEC(高校生・高専生科学技術チャレンジ)は、高校生、大学生の研究で日本学生科学賞と並ぶ日本最高峰の大会とされている。JSECと日本学生科学賞の上位入賞者は、ISEF(国際科学技術フェア)という大会に出場する事ができる。

フィゲロア 日本学生科学賞については知っていましたが、それと同様の規模の大会で優秀賞を受賞されたのは素晴らしいですね。

兼平 運が良かったことも受賞できた理由の一つだと思います。コロニーの研究をしていましたが、学校の機材が十分でなかったため、40倍という低い倍率で観察していました。本来は600倍くらいで細胞が見えるのですが、40倍では細胞は見えません。

フィゲロア なるほど。低倍率で観察するという環境の中で、他の環境では得られない、逆に新しい発見があったということですか?

兼平 はい。最新の機材では行われなくなった研究を、学校による制限下で行ったことで、新しい気づきを得ることができました。

フィゲロア なるほど。

顕微鏡で観察している兼平さん

フィゲロア では次に、研究で面白い点を教えてください。

兼平 研究を通して面白いなと感じている点がいくつかあります。まず、私が菌に興味を持ったのは、培養できるらしいので実際に培養してみようという単純な動機からです。調べていくうちに面白くなってきたのは、菌は単細胞生物なので細胞分裂で増えていくのですが、遺伝子はおおよそ一定で受け継がれていく点です。

環状DNA※3 のプラスミド※4 を取り込んで薬剤に対する抵抗を獲得することもあります。同じ種類の菌であれば想像がつきますが、全く種類が違う菌からもDNAを取り込んで抵抗を獲得することがあります。生物学的概念が覆されるような感覚を覚えました。

もう1つ面白い点は、培養されている菌はこの世に存在する菌の1%にも満たないと言われています。培養できない菌は圧倒的に多く、難培養性微生物や環境微生物※5 が作り出す環境の解明が興味深いです。

※3:DNAの二重らせんの一方あるいは片方が両端で結合し、環状になったDNAのこと。

※4:細菌は染色体DNAとは別に、環状DNAである「プラスミド」を細胞内に持つことができる。

※5:環境微生物とは、地球上のさまざまな環境に生息し、生態系の機能や安定性を支える微生物のこと。土壌中や水中に生息する微生物、大気中の微生物、人間の身体に共生する微生物も含まれる。

フィゲロア 種類が異なるDNAを取り込み、抵抗を獲得することがあることは初めて知りました。確かに違和感を覚えますね。では、研究で苦労したことはありますか?

兼平 顕微鏡の倍率が低かったことに加えて、作業量も大変でした。私の研究では、デジタルでない学校の顕微鏡を使用していたため、気泡の発生を時間ごとに追跡し、気泡の数を数える必要がありました。

フィゲロア 顕微鏡で気泡の数を測定する方法について教えてください。

兼平 はい。1分ごとに顕微鏡で撮影した画像を使用し、気泡の数を計測しました。

フィゲロア これらの流れを手作業で行ったということですか?

兼平 はい、基本的に手作業でした。技術が不足していたため、本来は自動化できる作業を手作業で行いました。苦労しましたね。

ドラフトチャンバー内で作業する兼平さん

フィゲロア 研究活動において、苦労は多いですか?

兼平 研究では、実験や作業はごく一部で、それよりも実験を組み立てたりすることが重要です。そこには実験の10倍から20倍の時間がかかります。楽しい反面、苦しい時間でもあります。

フィゲロア 実験の準備などが研究の時間のほとんどを占めると言う事は科学全般に共通する事だなと感じました。次は、科学に興味を持ったきっかけを教えてください。

兼平 僕の世代では「宇宙兄弟」ですね。それを読んでから科学が身近になりました。

アルセド 「宇宙兄弟」以外で好きな漫画はありますか?

兼平 私は特に「ジョジョの奇妙な冒険」が好きです。また、その作者である荒木飛呂彦先生は天才だと思っています。誰もが面白いと思うような分野で活躍されています。

アルセド 確かにそうですよね。研究以外の活動は何かされていましたか?

兼平 研究に集中しすぎて、他の活動はほとんどしていないです。

アルセド そこまで研究に魅了されていたんですね。次に、進路について教えてください。

兼平 私は大学受験を経て無事、筑波大学の生物学類に合格しました。集団における微生物内のコミュニケーションなどを研究する第一線の研究室を目指しています。その研究室があるから筑波大学を志望しました。

アルセド 今後の目標は何ですか?

兼平 環境微生物をそのまま培養することです。環境微生物をありのままに培養できれば、培養できない菌や、菌と菌の関係性などを調べるのが容易になります。

どういう生活を送っているのか、菌の生き様というものをよく調べられる気がするんです。

そこで、1種の菌のみを培養するのではなく、菌が生きている状態、やり取り、コミュニケーションなどのフローラ※6 をそのまま再現することが夢です。

※6:フローラとは、特定の地域や環境に生息する微生物の集合体のこと。

アルセド なるほど。その菌の例えば、A地点とB地点があって、A地点とB地点で菌の生殖層みたいなのが違えば、それも再現する事が可能なのですか?

兼平 はい。フローラのバランスをそのまま再現することが最終目標です。

アルセド 研究者として、菌の目標を達成したいんですね。

兼平 そうですね。

アルセド ありがとうございます。では最後に、Larva06の読者にメッセージをお願いします。

兼平 僕自身は研究が大好きでやってるんですけど、実は万人に研究を勧めるキャラではないんです。どうしても研究はやればやるほど成果が出るというものでもないし、中高生にとって研究を勧めるには資金・時間・環境など、あまりに越えなければならない障壁が多すぎます。ぶっちゃけそんな中で研究やってる人は変な人たちです(笑)。

でも、これを読んでくれている人の中には「そんなこと知るか!俺は研究がしたいんだ」って人も少なくない、研究せずにはいられないって人が少なくないと思います。そして、僕はそういう人たちが大好きです(笑)。

僕自身、先生に「大学でいくらでもできるから今は勉強しろ」と言われても、研究への衝動が止められませんでした。そんな止められない衝動を大切にしてください。

また、Larva06の読者の方にも、細菌に興味を持ってくれたらうれしいです。細菌についてぜひ少し調べていただけると、世界が良くなると思います。少なくとも僕にとっては(笑)

アルセド ありがとうございます。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

兼平 ありがとうございました。