カマキリへの愛が発端?!オートファジーを研究!西美生子さん研究インタビュー

幼い頃からカマキリを愛し、現在はオートファジー活性の変化の研究をしている西美生子さん。西さんの研究のきっかけや現在まで興味関心を追いかけてきた道筋、カマキリと現在の研究の繋がりについてインタビューを行いました。

ヰンジゴカルミン 本日はよろしくお願いします。まず、専門分野を教えていただけますか?

西 細胞生物学とオートファジーです。オートファジーとは、細胞内を正常な状態に保つために、細胞内の物質を分解することです。

ヰンジゴカルミン 興味深いですね。オートファジーには様々な種類があるようなイメージを持っているのですが、具体的にオートファジーのどのようなことを研究されているのか詳しく教えていただけますか?

西 私はリソソームという細胞内で胃のような役割をしている細胞小器官が壊れた時に起こるリソファジーというオートファジーを研究しています。なかでもタンパク質の凝集が、リソファジーのステージの進行に関係しているので、それを阻害することで、リソファジーが起こらなくなるのではないかと仮説を立てています。

ヰンジゴカルミン なるほど。その研究の面白いところはどのようなところでしょうか?

西 凄く小さいものなのに、それを変えると大きいものが変わるというところです。

ヰンジゴカルミン 僕も同じような分野にいるためとても共感します。では、逆に研究の中で苦労したことはありますか?

西 最初の方は実験の手技などが分からず、条件によって変化したのか、自分が下手でそうなったのか、分からないことで苦労しましたね。何回行っても同じ結果になったため、その実験にはコストがかかることもあり、罪悪感を感じました。

しかし、大学院生と一緒に研究していたので、大学の先生方からアドバイスをいただけることもあり、無事に乗り越えることができました。

ヰンジゴカルミン 実験をしていく上で、仮説と違って苦労したというようなことはありましたか?

西 何度か結果が仮説と異なり、改善を試みました。しかし、上手くいかず苦労したというほどではありません。研究室の助教授方が行っていた研究の結果を受け、方法を少しずつ変えていったのですが、予想とは全然違って、細胞が死んでしまいました。私の培養方法が悪かったのか、それともその条件のためかが分からなかったので、それを3回ほど試しましたが、どうしても上手くいきませんでした。結局この実験では、仮説が間違っていたことが分かり新しい発見がありました。

ヰンジゴカルミン なるほど。予想外の結果から興味を持ち、調べていくことは面白いですよね。では、もう少し詳しく研究をはじめるまでの話をお伺いしてもよろしいでしょうか?

西 元々、生物に興味がありました。中学生の頃、吉森保教授の講演を聞いたのが研究のきっかけです。当時は全然知識がなかったのですが、細胞の中を研究する細胞生物学と細胞の外を研究する細胞生物学があることを知り、細胞の中の細かい部分まで解明出来たら本質的なことが分かりそうだなと思い、先生に連絡しました。

ヰンジゴカルミン 吉森教授の話をきっかけに、直接連絡を取ったのでしょうか?

西 直接ではないですね。当時在籍していた、科学に興味を持つ小中学生が集まる「めばえ適塾」※1 でお世話になっていた教授に紹介してもらいました。それ以降は割とすんなり受け入れて貰い、進めることができました。その後、SEEDSプログラム※2 に参加し、本格的に研究を始めました。

※1:https://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~mebae/

※2:https://seeds.osaka-u.ac.jp/

ヰンジゴカルミン SEEDSプログラムは参加してすぐに研究を開始するものなのですか?

西 SEEDSプログラムの中でも3つほどコースがあり、コースによって異なります。

まず1つ目は、ひなちゃんが参加している体感コースというコースです。これは、倍率が150倍程度と非常に高く、参加しても1年くらいは研究の準備をするものです。

2つ目は、学校でやっている研究を大学の先生に助けてもらって行う実感コースS、体感コースSといったコースです。

3つ目が私が参加したもので、研究内容を持ち込み、先生と共に行うという探究コースです。

ヰンジゴカルミン つまり、SEEDSプログラムといっても一括りにはできないんですね。西さんが様々なプログラムの機会を利用して、研究を進めてこられたことが分かりました。

学会発表をする西さん

ヰンジゴカルミン 以前カマキリが好きだという話をお聞きしましたが、今の研究とは関わりが薄いような気がします。そこはどのように繋がっていくのでしょうか?

西 実は一時期、物理、特に素粒子物理学といった非常に小さなスケールの世界に興味がありました。物理だけでなく生物もスケールを小さくしていくと、小さなことですべてが体系的に理解できるようになることに気づいてから、とても面白いなと思いました。

カマキリは勿論好きだったのですが、そこから寄生虫に興味を持ち、ハリガネムシやその他の微生物、そして、単細胞の微生物や細胞と、更に小さなものにも興味を持つようになりました。

ヰンジゴカルミン なるほど。そのように繋がっていくのですね。今まで興味を持ってこられた事柄で、情熱的に推したいと思う対象はありますか?

西 情熱を持って推すのはやはりカマキリです。一度見てほしいのはカマキリの捕食シーンです。口がただパクパクしているだけではない、口の周囲の機械的な部分に、どんな分野の人も惚れ込むと思います。

ヰンジゴカルミン カマキリが本当にお好きなんですね。

カマキリを指に乗せた西さん

ヰンジゴカルミン では、オートファジーの研究でモチベーションになるのはどのようなことですか?

西 オートファジーはまだ注目され始めたばかりなので、まだまだ分かっていないことがたくさんあります。ちょっとした疑問でもまだわかっていないことが多く、それを目の前で確認できるということが凄く楽しいです。

ヰンジゴカルミン オートファジーについては、まだまだ分からないことが多いのですね。

西 意外と分かっていないことが多く、今でも多くの人が研究しています。オートファジー研究のキーマンとして、ノーベル賞を受賞した大隅良典先生が挙げられます。

ヰンジゴカルミン 次に研究以外のことをお聞きしたいと思います。趣味は何でしょうか?

西 部活は放送部、山岳部、園芸部、応援団の4つに入っています。その中でも、特に山岳部と放送部での活動が好きで、どちらも全国を目指しています。

ヰンジゴカルミン すごいですね。放送部の全国大会というと、どんなものがありますか?

西 有名なもので言うと、Nコン※3 があります。原稿を考えたり、小説から文章を引用するなどして、その読みのミスのなさ、発音の綺麗さなどを点数化して競います。

※3:NコンWEB (nhk.or.jp)

ヰンジゴカルミン 面白そうですね。放送の技術が点数化されるという感覚があまりないので気になります。山岳部での活動ではどのようなところが好きですか?

西 やはり登っている時の感覚が一番好きです。私はだいたい先頭を登らせてもらっているので前には誰もいなく夢中になることができ、疲れが癒されます。

とてもしんどいはずなのに、すごく楽しいんですよね。本当に自然が好きなのだと思います。

登山をする西さん

ヰンジゴカルミン 園芸部にも所属されているとのことでしたが、これにはどのような関係があるのでしょうか?

西 新しい部活ができたと聞き、すでに3つ入っていましたが、興味があったので入部しました。雑草を抜いているので、無になれるという部分が好きです(笑)。

ヰンジゴカルミン なるほど。では次に、将来やりたいことや希望する進路などはありますか?

西 このまま順当に行けば研究者を目指すのかなとは思っていますが、新しい物好きで飽きっぽい部分もあるので研究者に向いていないのかなとも思います。

最近は、機会があればスタートアップの手伝いをしてみたいとも思っています。

ヰンジゴカルミン では最後に、Larva06の読者に向けて何かメッセージをいただけますか?

西 研究をしたいと思っているのにできない中高生は多いと思います。そんな中で私がこのような経験をさせてもらえたのは私の能力が高いなどでは全くなく、ひとえに環境を整えるチャンスをいただけたおかげです。研究をしたいと思っている人は、ぜひチャンスを見つけるための情報のアンテナを張って夢を叶えてほしいなと思っています。

ヰンジゴカルミン  とてもいいお話でした。お忙しい中、本当にありがとうございました。