生物の再生能力に魅了され、カタツムリの再生の定量化に挑む!吾妻真希さん研究インタビュー
生物が生まれつき持っている再生能力への関心から「人間もウーパールーパー並みの再生能力を持てるようにしたい」と考え、現在はカタツムリの再生能力について研究している吾妻真希さん。吾妻さんが行っている研究の内容や再生の定量化、生物の魅力などについてインタビューを行いました。
なのめーとる。 本日はよろしくお願いします。まず、自己紹介をお願いします。
吾妻 カタツムリの再生能力と再生の定量化を研究している高校2年生の、吾妻真希です。生物がとにかく大好きで、生物学全般を全て愛している、そういう高校生です。
なのめーとる。 生物全般への愛がすごく伝わってきました。その中でも特にカタツムリを研究対象にするようになるまでの経緯を教えてください。
吾妻 生物の再生能力に興味を持ったのが始まりです。私は小学校4年生の頃にウーパールーパーを飼い始めました。ウーパールーパーは、手足はもちろん、脳や心臓の一部などが傷ついた場合であっても、死ななければどんな怪我でも再生できると言われているほど、すごく再生能力が高い生き物なんです。それを知った時に衝撃を受けるとともに、憧れを持ちました。またウーパールーパーは身体の一部を再生できるのに、どうして人間にはできないのだろうと疑問を持ち、人間も再生能力が高かったら、怪我や病気を恐れずにもっと健康に生きられるのではないかと思いました。
その後中学校に入学してから、生物好きのカタツムリを飼っている親友ができ、私も飼いたいとカタツムリを飼い始めました。
そして研究部※1 の募集を知り、何か研究したいと思うようになりました。再生能力というテーマは考えていたのですが、流石にウーパールーパーを切るわけにはいきません。そこでたまたま飼っていたカタツムリを対象にするのが良いのではないかと思い、今の研究を始めました。色々成り行きって感じです。
※1:研究部(角川ドワンゴ学園 N/S高等学校 研究部)とは、N/S高の生徒以外も所属可能である、学術研究を志す中高生相当をサポートするコミュニティ。https://nnn.ed.jp/about/club/kenkyubu/
なのめーとる。 ウーパールーパーが持つ再生能力への憧れがきっかけだったんですね。つまり、いずれは人間も自身の身体を再生できるように応用したいという気持ちもあるということでしょうか?
吾妻 はい。私の将来の野望は、ウーパールーパー並みの再生能力を持つ超人間を作り、人類をみんな超人間のようにしたいということです。
今の再生医療では、例えば体外でiPS細胞等を使って臓器やその一部を作ったものを体内に移植するといったことがメインで研究されていると思うのですが、私はその移植というプロセスをなくしたいと思っています。
つまり人間そのものが自然に持っている、遺伝子の中に眠っているような再生能力を開花させて、怪我した時でも自分の再生能力で治せるようにしたり、病気で悪くなったところも自分で再生して修復できるようにしたりと、そのように移植という段階をなくした再生医療を将来的に実現したいと考えています。
なのめーとる。 生物が本来持っている修復能力を引き出すという点では、どちらかというと東洋医学的な考え方ですね。ご友人の影響でカタツムリを飼い始めたことが今の研究につながったとのことですが、なぜカタツムリを対象にされたのですか?
吾妻 カタツムリもそこそこ再生能力が高いということを知っていたので、その繋がりも多少はありましたが、やはり一番は手元にあったところがきっかけだったと思います。
なのめーとる。 確かに研究対象として、手元にあり、すぐ扱えることはすごく重要ですよね。現在は、ウーパールーパーの方の研究はされていないんですか?
吾妻 はい、していません。ただ将来大学等に進んだらウーパールーパーを研究したいため、今のところカタツムリの研究は高校生の間までにしようかなと考えています。やはり私にとっては、人間をウーパールーパーみたいにしたい、ウーパールーパーを再生医療に繋げたいという思いの方が強いです。
本格的にウーパールーパーを研究するとなると、倫理的な問題が関係してくることもあります。そのため、そのような問題を超えてウーパールーパーで研究できる環境に属するようになったら、やはりウーパールーパーの研究がしたいと思っています。でも今はまだそれが難しいので、カタツムリに集中してやっている感じですね。
ふぉらみ 現在飼育されているカタツムリの種類と、それらの種を選定した理由について教えてください。
吾妻 今飼っているのは、ウスカワマイマイ、コハクオナジマイマイ、ミスジマイマイ、不明種の計4種です。そこにいたから捕まえたという感じなので、あまり大きな理由はありません。ただ、今私は他の種に比べて大きいミスジマイマイをメインの研究対象にしています。他のカタツムリだと小さく、観察や切断などの作業がしにくいので、一番大きい種を選ぶようにしています。
ふぉらみ 今後飼育してみたいカタツムリの種はありますか?
吾妻 あまりそういうのは考えたことがなかったです。カタツムリではないのですがナメクジにも興味を持っていて、殻がない分扱いやすそうだと思う反面、管理等が難しそうなので、まだ手は出していません。
ふぉらみ 個人的に、ビロードマイマイやエゾマイマイのように、殻が薄く軟体部が大きいカタツムリは殻が破損するリスクが高い分、再生能力が高いのかという点に興味があります。
吾妻さん 確かにそうですね。種によって再生能力が違うという点は、私も結構考えています。例えば自切※2 する種もいることを考えると、種間で比較するのも良いんじゃないかなと思うんですけど、入手が大変そうだとも感じています。
※2:自切とは、生物が主に外敵から身を守るために行う、体の一部を自ら切り離して身を守る行動のこと。節足動物やトカゲなどの自切が有名だが、石垣島と西表島に生息するカタツムリであるイッシキマイマイも自切をする種として知られる。
ふぉらみ 確かに、それぞれ分布が限られていますもんね。
華梨 両生類は成長すると再生能力が落ちるようなイメージがあるのですが、カタツムリは時期によって再生能力に差はあるんですか?
吾妻 それも今後私が研究したい課題の一つです。一般的には生物は老化すればするほど、再生能力が落ちるということが有名ですが、私が大好きなウーパールーパーは、ネオテニー(幼形成熟)※3 という特徴も持ってるので、ずっと赤ちゃんの時と同様の再生能力を持ったまま大人になっていきます。そういうずっと赤ん坊みたいに、再生能力を高いまま維持できる生物とかもいたりするので、カタツムリがどうなのかは、結構気になる所ですね。
※3:ネオテニー(幼形成熟)とは、成熟した個体になっても、幼生や胎児にみられる特徴が残っていること。
華梨 ありがとうございます。
なのめーとる。 研究の目標について教えてください。
吾妻 長いスパンの目標は、カタツムリの再生能力の向上法を調べることです。もしカタツムリの再生能力が向上したならば、他の生物にもそれを応用できるかもしれないと考えています。
短いスパンだと、再生の定量化が目標です。カタツムリは軟体部がうねうねしていて自由自在なので、いつも同じ大きさや形で写真を撮ることができないですし、再生による重量変化が微細すぎるので重量で測ることもなかなか難しいです。そこでどうやって再生を定量化していくかというのが課題になっており、今はそれを克服するべく色々頑張ってます。
なのめーとる。 2023年の研究部の合宿でも定量化に苦労されているというお話※4 をお聞きしましたが、あれから1年間、どのような試みをされてこられましたか?
吾妻 去年の研究部の発表では、カタツムリを染色したところまでを話した気がします。そこから画像解析を使い始めました。簡単に言うと、カタツムリの身体を下側から撮影して、画像解析による軟体部の面積や体積の測定を今行っています。
それに加えて染色もすることで、生えてきた新しい組織と元の組織を区別し、それぞれの面積や体積を画像解析を駆使し算出したいと考えています。
※4:2023年8月の研究部の合宿で吾妻さんが行った発表のポスターはこちら。
なのめーとる。 染色と画像解析を組み合わせているんですね。
ふぉらみ 染色の時にカタツムリが死んでしまったこともあったとのことですが、その後、生きたまま染色できる方法は見つかったんでしょうか?
吾妻 見つかりました。以前は溶液が濃すぎたので、少し薄くしました。また以前はカタツムリを溶液にドボンと浸けていたのですが、それを変え、薄く溶液を伸ばした上を這わせるようにすると、いい感じに色がつきました。しかしそれでも、今のところ色が1週間ぐらいしか持たないので、もう少し長く持つ方法を今探しています。
ふぉらみ なるほど。再生能力を定量化する上で、軟体部よりも殻の方が一見簡単にみえますが、わざわざ軟体部をされてるのはなぜでしょうか?
吾妻 私の最終目標は、研究成果を人間や他の生物の再生にも活かすことですが、カタツムリの殻はカルシウム等の塊で、人間は殻を持っていません。それゆえに、カタツムリの殻の再生能力を解き明かせたとしても、それを人間をはじめ他の生き物に応用するまでが少し遠い気がしました。そのため、まずは組織の再生能力について知りたいと思い、軟体部を研究対象にしています。
ふぉらみ なるほど。
華梨 毎回切断する長さは決めてらっしゃるんですか?
吾妻 基本は3mmで切っています。以前ポスター発表をした時に「どこまで切ったら死んでしまうのか?」といった質問をいただいたこともあり、それを試してみたいというのはあるのですが、私は自分で飼っているカタツムリを被検体にしているので、個体数がそこまで多くなく、カタツムリが死ぬと困ってしまいます。それらの理由から、絶対に死なず、再生するラインとして3mm程度を狙って切っています。
華梨 カタツムリは大体どのくらいの周期で再生するんですか?
吾妻さん 3mm切断すると、平均で90日ぐらいで再生しますね。結構時間がかかるイメージです。
なのめーとる。 今されている研究に関連して、一番面白いと感じているところは何ですか?
吾妻 今はまだ実現してないですが、実現したら面白いという点で言うと、染色の仕方を工夫することで、細胞の増殖の様子が可視化できるのではないかと考えています。
腹足のある一部分を、例えばドット状等に染色すると、そのドットが再生によって動きます。そして、その動き方によって、細胞のどこが増殖してるからこういう風に動くというのがわかると思っています。
まだどこまで可能かは分かりませんが、染色の工夫によって、幹細胞がどこに存在してるのか、もしくは集中してるのかが、大学で使っているような凄く難しい器具等を使わずに分かるようになればいいなと考えています。それが今、個人的に一番ワクワクしてるところです。
ふぉらみ ドット状に染めるというのは、注射器で垂らすみたいな感じなんでしょうか?
吾妻 そうですね。今のところ注射器を予定してるのですが、カタツムリに意識がある時にそういった針状のものを刺すと、筋肉が収縮して針が通らなくなってしまうため、その点をどうしようかと考えています。
例えば、プラナリアは氷の上を歩かせる等の冷却によって麻酔状態になるというのを見たことがあるので、カタツムリでも比較的侵襲性が低い方法で麻酔状態にして、針が通せればいいなと思ってます。
ふぉらみ それは面白いですね。私もカタツムリを麻酔状態にしたいことがあるので、色々試してみようと思います。
華梨 実験のための染色自体が再生能力に影響を及ぼすことはあるんでしょうか?
吾妻 私はクリスタルバイオレットという染色液を使って研究をしてきました。クリスタルバイオレットはタンパク質を染めるため、染めやすいかなと思って選んだのですが、一方で人に対しては発癌性や毒性が少しあります。そのため、再生能力が染色液に影響されるかもしれないという点は、今後調べていかなければいけない課題だと思っています。
なのめーとる。逆に、研究で苦労や困難を感じているところについて教えてください。
吾妻 それこそこの研究の肝なのですが、やはりカタツムリは再生の定量化が難しいということです。そのため何度も「どうして私はカタツムリを研究してるんだろう」と思ったこともありました。それでも、カタツムリが再生していくのを見ていくと、凄く興奮して「やっぱりこれだな」という感触があるので、やっぱり研究はやめられないですね。
あと苦労してる点としては、今年※5 は猛暑すぎてカタツムリが取れないというのが、一番の死活問題です。私は研究対象を外から獲ってきていますが、今年は暑いですし、梅雨も短かったので、全然カタツムリがいません。一時期は飼育個体数が1桁台だったのですが、今は少し持ち直して、2桁台でなんとか維持しています。特にミスジマイマイが全然いないので、大変です。
生物部での研究の関係で、浅川水再生センターというところに行ったのですが、その付近にたくさんコハクオナジマイマイがいたため、今はコハクオナジマイマイで画像解析をし、再生の定量化を調査しています。
※5:インタビュー実施は2024年8月。
ふぉらみ カタツムリ、本当に見つからないですよね。
なのめーとる。 最初は成り行きでカタツムリに行き着いたと仰っていましたが、今はカタツムリの再生の過程を見守ることが楽しいというお話をしてくださいました。何が心境の変化に繋がったのでしょうか?
吾妻 目の前で生物が再生していく過程を、その時一番間近で見ていることに対する感動ではないかと思っています。
また研究をしている時は、結果が仮説通りであったとしてもそうでなかったとしても、その結果は今のところ自分しか知らないものです。そのため、そういう「自分が一番最初に知った」という事実を目の当たりにすると、体の中からうわぁーっと感動や「クソデカ感情」というようなものが巻き上がる(笑)。そういうのが結構強いかなと思います。
ふぉらみ めっちゃ分かります(笑)。
吾妻 上手く言葉にできないんですけど、その時にドバドバと脳からアドレナリンのようなものが溢れ出すのが止まりません。自分が世界で初めて知ったという感覚は、研究でしか味わえないですし、それが研究の醍醐味や真の目的ですから、それに取り憑かれてる部分が大きいなと思います。研究対象が変わっても、その研究の面白さを感じているから楽しめています。
なのめーとる。 ありがとうございます。研究の面白さと、知的探求によって生まれる愛着みたいなものをカタツムリに見出されてるんですね。
ふぉらみ 以前、スポーツドリンクによるグルコース吸収で細胞増殖が活発になる可能性があると書かれてらっしゃった※6 と思うのですが、なぜグルコース溶液等ではなく、スポーツドリンクを使われたんでしょうか?
吾妻 それは単に面白いからというのが大きいです。研究では話を聞いてもらう人に「面白い」と思ってもらうことも大事かなと思っています。結局、研究が社会で活かされる時は、研究の専門的な面白さを理解してない人にも理解してもらえることも大事だと考えています。単なるグルコース溶液と言うよりは、私たちにも身近なスポーツドリンクと言った方が、なんか、おーってなるじゃないですか(笑)。なんか、そういうエンターテイメント性、面白さみたいなものも考えると、スポーツドリンクを使った方が面白いかなと思ったので、スポーツドリンクを使いました。
またスポーツドリンクは粉末等で販売されているので、1から調合しなくていいという点で楽だというのもあります。
※6:日本生態学会第71回全国大会 講演要旨より。https://esj.ne.jp/meeting/abst/71/PH-55.html
ふぉらみ 確かに興味を持ってもらう上で、エンタメ性は大事ですね。
なのめーとる。 昔からずっと生き物が好きだったと仰っていましたが、いつ頃から生物に興味を持つようになったんでしょうか?
吾妻 もう物心ついた時からずっと好きです。
なんとなくこれがきっかけかなと思うものとして、幼稚園の年少か年中くらいの時に、家族で飛行機に乗る旅行をしたことがありました。そのくらい幼い子だと、移動中暇で仕方がないじゃないですか。なので暇つぶしとして、母がポケットに入るようなミニ図鑑の哺乳類と昆虫のバージョンを買ってくれて、それを幼稚園の間ひたすらずっと読んでいた記憶があります。科学図鑑等もずっと読んでいた記憶があるので、始まりとかは覚えていなくて、物心ついた時から本当にずっと好きみたいな感じです。気がついたら、生物オタクでした。
なのめーとる。 十数年もの間生物を愛し続けている吾妻さんから見て、生き物の魅力ってどういうところだと思いますか?
吾妻 今ある生物の形について、私たちにはもう理解しきれないところもあり、でも少しは理解できるところもあり、その少し理解できるところさえも、素晴らしい機構で満たされている美しさが本当に堪りません。もちろん、可愛いっていうもっと主観的な気持ちもあります。
生物の機構の底知れぬ美しさは、何億年もの間ずっと進化の過程で洗練されてきて、今もその洗練は続いています。ずっと究極の美の形を追求してるような、でもそこに気持ちや目的がないというところが一番美しいと思っています。ただそうなったという、その結果としての生物が、美しいから好きなんだと思います。進化に目的がないという生物の美しさが好きなんですかね(笑)。
なのめーとる。 生物が追求する美の無目的性にも魅力を感じられているんですね。
華梨 吾妻さんの生き物に対する好奇心や愛が凄く伝わってきます。将来はどのような分野に進まれる予定でしょうか?
吾妻 再生生物学や再生医療をやりたいです。そうなると、大学は理学系等で学ぶことになると思います。将来的にも、研究者になりたいと考えています。
なのめーとる。 吾妻さんはとても好奇心にまっすぐに進まれている印象を受けます。
吾妻 好奇心はみんなが持っていて、それをどこに発信するかという問題かなって思っています。私の場合は、たまたま再生生物学一本にズバッと発信してきたので、その好奇心が、すごい如実に現れてるんじゃないでしょうか。やはり、再生に対する憧れによって、研究が進んでいるんじゃないかと思います。
なのめーとる。 研究以外で好きなことや趣味があれば教えてください。
吾妻 やはり生物に関わることが一番の趣味で、生物学を勉強することが一番楽しいです。他には、ピアノや読書も好きです。中学校に入ってから、友達の影響でアルベール・カミュの『ペスト』や遠藤周作の『沈黙』が好きになりました。『ペスト』については学校のビブリオバトル大会で1位になり、東京大会まで行ったこともあります。畑違いなんですけど、意外とそういう文系っぽい活動も好きです。他には模擬国連もやったことがありますが、楽しかったです。
なのめーとる。 多趣味なんですね。研究を進めていく中で、熱量を保ち続けることが難しくなる時には、どんなことをされていますか。
吾妻 やっぱりやる気がなくなるときや「私には才能がないし、みんなはすごいしダメだ」等と思うときもあります。
でもそういう時は1回、「私がすごくなくてはいけない理由」を突き詰めていくと、「無」になっていきます。結局無に終結するのであれば、やればいいじゃん、と思います。
暴論ですが、「無に終結するからこそなんでもやれるし、気にしないでやってもいい」といったことを、自分の中で言い聞かせてやっています。気分が落ち込んだときとか、気分が乗らないときとかは、そういう感じで、1回重荷を全部捨てて、もう1回戻ってくる、といった切り替えをしています。
なのめーとる。 自分を1回リセットする方法が決まっているのが素敵ですね。
華梨 吾妻さんの生物に対する好奇心や熱量はどのように推移してきたんでしょうか?
吾妻 小学生の時は「生物が好き」という割とほんわかした感じでしたが、中学校に入ってから生物オタクの親友と出会いました。私と同じレベルの熱量で生物が本当に大好きで、話が通じる子に出会えたおかげで、自分はやっぱり生物学が大好きだということを再確認し、切磋琢磨できるようになりました。
また私は再生生物学が大好きでしたが、その友達は生物学の中でも私とは異なる分野に興味を持っていました。友達の影響がすごく大きかったです。そのためブレずに、やはり私は再生生物学が好きだという点が認識できたと思います。
華梨 同じような熱量のご友人の存在がとても素敵ですね。
吾妻 はい。恵まれてると思います。あと研究部に入ってからも、やっぱり部員それぞれが、好きなことを探究していました。本当に部員に対しては、尊敬しかありません。そのようにみんなが他の分野で頑張ってる様子を見て、とてもかっこいいと感じたことも、自分が頑張りたいと思うモチベーションにつながっていると思います。
ふぉらみ 私も幼稚園や小学校の頃は、自分は凄く異端なのかと思っていましたが、中学、高校辺りで同じぐらいの年代の同好の士に出会いました。やはり、同好の士というか、そういう方々の存在は大きいですよね。
吾妻 そうですね。私は人との出会いが研究に活かされていると思っています。
ふぉらみ 今まで様々な学会で発表をされてきた中で、他の方々からのフィードバックで特に良かったものはありますか?
吾妻 まだ画像解析をしていなかった時に、サイエンスキャッスル※7 で研究発表をしたのですが、たまたま同じ大会で画像解析を使った研究をしている方がいたことから、審査員の方が私の再生能力の研究でも画像解析が使えるのではないか、と言ってくださいました。私もその発表を聞いて面白そうだと思っていたところだったので、その審査員の方のアドバイスが、私の背中を押しました。それが今の画像解析に繋がっているので、私はできる限り研究発表ができる機会には出るようにしています。
そういうディスカッションの中で生まれてくる発見には素晴らしいものが多いので、可能な限りそういう場を踏むようにしてきました。
※7:株式会社リバネスが運営する、中高生研究者による世界最大級の学会。https://s-castle.com/
ふぉらみ 面白いですね。他の研究の手法を取り入れると、一気に研究が進むことがありますよね。
なのめーとる。 最後に、Larva06の読者にメッセージがあれば教えてください。
吾妻 私は研究部について、実は1期生の募集の時から知っていました。でもその時は応募できなかったんです。その理由としては、自分に自信が無かったというのが1番大きいです。自分には研究なんてできるはずがないと思っていました。絶対無理だなと。だから、ちょっと興味はあったんですけど、1期生募集の時はスルーしちゃったんですよね。
でも2期生の募集を見て、「やるだけやってみても損はないじゃないか」「受験料等もないからやってみるだけはタダだ」と思って心を決めました。それで応募してみたら、今ここまで来たっていう感じです。
そのように、私は過去には自信がなくてできなかったこともありましたが、今は「やってみるだけならタダ」だからやってみようという精神を大事にしています。それによって、ここまで好きなことに触れて来られたので、「やってみるだけタダ」精神は、今のところ私の人生では成功しています。
そのため皆さんも「周りの人がすごくて、自分が挑戦してもダメそうだな」と思う時も、「もし失敗してもノーダメージなら、やってみた方がいい」という精神でいたら、結構いろんなことにも挑戦できるし、楽しいんじゃないかなと思います。そうやってやってみた時の出会いによって、人生は凄く豊かになっていくんじゃないでしょうか。
なのめーとる。 とてもいい言葉です。本日はありがとうございました。
編集後記
Zoomでのインタビューの際、吾妻さんとふぉらみさんのお二人が、生物に関連する同じバッジを所持しておられたことで場が盛り上がりました。
またガチャガチャで入手された「アズマヒキガエル」の模型やT4ファージのマスコット、取材時にも着ておられたウーパールーパーのTシャツ等、生物にまつわる様々なグッズを収集されている点からも、吾妻さんの生物への愛が垣間見えたインタビューでした。(なのめーとる。)