コミュニケーションロボットを通して、世の中の寂しさを解消したい!篠部虹人さん研究インタビュー

入院中の患者さんが感じる寂しさを解消したいと考え、幼い頃から続けてきたものづくりを活かし、コミュニケーションロボットを開発する篠部虹人さん。篠部さんが開発してきた複数のロボットやものづくりの魅力、今後のビジョンなどについてインタビューしました。

なのめーとる。 本日はよろしくお願いします。まず、自己紹介をお願いします。

篠部 高校3年生※1 の篠部虹人です。僕はずっと、ロボットを通して世の中の寂しさを解消したいと考えてきました。今は特に入院している患者さんが、家族や友達に会いたくても会えないという寂しさをロボットによって和らげようという取り組みをしています。

※1:学年や記事内の情報は2024年12月のインタビュー実施時点のもので、最新のものとは異なる場合があります。

なのめーとる。 具体的にはどういったロボットを開発されてきましたか?

篠部 言語や身体によって人とやり取りをする「コミュニケーションロボット」と呼ばれるロボットを作ってきました。例えば、寝たきりの患者さんが病室から遠隔操作し社会参加するための分身ロボット「ロボくま」や、入院環境上の都合でお母さんと触れ合えない子供たちに、お母さんとハグしてるような感覚を届けながらお母さんと話せる「Hug Bot(ハグボット)」というロボット、またそれに呼吸と体温を加え、より人らしくしたロボット「Breath」を開発してきました。

分身ロボット ロボくま。話す・見る・動く分身として遠隔操作。ぬくもり溢れるルックス
画像:篠部さんが開発した分身ロボット「ロボくま」
ハグコミュニケーションロボット HugBot。離れている人と話す・聞く・観る。自立できない不安定な形状
画像:篠部さんが開発したハグコミュニケーションロボット「Hug Bot」

みゆ お母さんに包まれてるような感覚を提供する「Hug Bot」と呼吸をするロボット「Breath」を開発されてきたとのことですが、その2つには似ているところもあると感じました。2つのロボットの関連や位置づけを教えてください。

篠部 僕は今まで主にHug Botを開発してきました。作ったHug Bot1号機は、ひたすら抱きやすい形状を追求したロボットで、遠隔者との音声会話とビデオ通話が出来るものでした。しかしそれを用いて実証実験をしていくと、人らしさがない、生命感がないという課題が明らかになりました。それらを解決するために開発している入眠に寄り添うロボット「Breath」は、呼吸をして温度を持つ人間らしいロボットという点で、Hug Botの進化版として延長線上にあるイメージです。

なのめーとる。 ありがとうございます。呼吸をするロボット「Breath」について詳しく教えてください。

篠部 人間の安静時の呼吸リズムとされている、だいたい5秒吸って5秒吐くというリズムの呼吸の機能を搭載しています。動物が触れ合っている仲間の呼吸のリズムや深さに同調する「呼吸の引き込み現象」というものがあります。その現象を利用することにより、不安で寂しい気持ちを抱えてる子供たちが、ゆったりした呼吸をしているロボットに抱きつくことで、ロボットの呼吸に同調しほっとする気持ちになる。そんなことが実現できるんじゃないか、というのが現在の取り組みです。

ぬくもり伝達ロボット Breath。人らしい「呼吸と体温」を持つロボット
ぬくもり伝達ロボット Breath。離れている人と話す・聞く。ゆっくり呼吸 人肌の温かさ
画像:篠部さんが開発しているぬくもり伝達ロボット「Breath」

なのめーとる。 Breathでは、呼吸をどのような仕組みで表現しているのでしょうか?

篠部 呼吸を制御するポンプで空気の排出量を調節し、排出した空気の受け皿であるシートが膨らんだりへこんだりします。それを視覚的に見れば呼吸してるように見えるという仕組みです。

なのめーとる。 ありがとうございます。ちなみにロボットなどを作る活動はいつ頃からされてきたんでしょうか?

篠部 ロボットを作り始めたのは中1の時でしたが、その時はただ単にものづくりをしてるだけで、今のような研究開発はしていませんでした。今のような活動にシフトしたのは、高2の夏休みに入る前ぐらいからです。

なのめーとる。 なるほど、では本格的に始めてからは1年ほど経つんですね。

篠部 はい、まだまだ初心者です。

なのめーとる。 1年で複数のロボットの開発を進めてこられたのはすごいですね。開発の目的は、やはり入院中の子供たちに安らぎを提供するところにあるんでしょうか?

篠部 はい、今はそこですね。子供たち、そして大人の患者さんを含めて入院中の寂しさを解消するという目的は一貫していて、そのためにずっと作っています。

なのめーとる。 そういった寂しさに注目し、解消したいと思われたきっかけは何だったのでしょうか?

篠部 僕のクラスメイトのお母さんが進行癌で入院中だった時に、病室からでもクラスの会合や授業参観に出席したいと言っていました。僕は小さな頃からずっとものづくりが好きだったので、その願いを自分の技術を通して解決できないかなと思ったのが高2の夏休み前です。その際に「OriHime ※2」に似たロボットを、彼女向けに作りました。それをきっかけに、ロボットでそういう病室にいる人たちの社会参加をより円滑にできるんじゃないか、繋がり方の幅を多様にできるんじゃないかと考えるようになりました。

※2:「OriHime(オリヒメ)」は、株式会社オリィ研究所が開発する遠隔操作ロボット。入院や障害などの影響でその場に行くことができない人が、ロボットを通じて遠隔でコミュニケーションに参加することを可能にします。https://orihime.orylab.com/

なのめーとる。 なるほど。そういったきっかけで開発を続ける中で、何がモチベーションになっているのでしょうか?

篠部 解決できそうだなと感じている問題に対して、自分の中には「まだ自分の手では何も生み出せてない」という感情があります。その感情があくなき探究心を生み、「まだもっといいものができるんじゃないか」「もっと実証実験をすればいろんな課題が明らかになってくるから、まだ最適解じゃないんだ」という想いに繋がるため、続けていくモチベーションになっています。

また、先程紹介した分身ロボット「ロボくま」の完成間近に一番届けたい人が亡くなってしまい、届けたい人に自分が作ったものが届かないという悔しさを感じました。そのような体験をもう二度としたくないという感情が、自分を突き動かす原動力になっているのかなと思います。

なのめーとる。  それは辛い経験でしたね……。それでも悔しさをバネにして探求を続けていく中で苦労されていることもたくさんあると思いますが、その中でも特に苦労されている点はありますか?

篠部 基本的に今の企画・開発は自分1人でやっているのですが、僕にはまだまだプログラミング含め技術力がないため、一緒に取り組む仲間を探していますね。特に技術的なサポートをしてくれる仲間を探しています。

僕はどちらかというと技術者というよりは発想を生み出すほうなので、技術を実装していく中で、自分たちが社会の何に技術を使いたいのかという志が同じメンバーが周囲に集まると非常に嬉しいなと思っています。

なのめーとる。 技術的な面でも刺激の面でも、研究開発において仲間の存在は大きいですよね。以前からものづくり自体は色々されてきたとのことですか、ものづくりの魅力はどんなところにあるとお考えですか?

篠部 僕がものづくりが好きな理由は、誰もまだやったことがない0や1をいかようにも作れることが面白いと感じているからです。幼少期の頃に通っていた学校が本当に山奥で遊具がなかったので、自分達で遊具を作るところから始まり、最終的に家や秘密基地を作りました。自分たちが作った秘密基地って誰のものでもないし、世界に1個だけだし、そういうものをたくさん作れるものづくりってすごいなと思います。そういったところが、ものづくりの魅力だと考えています。

なのめーとる。 一番最初のものづくりの対象である秘密基地は、何歳ぐらいの時にどういったきっかけで作られたんですか?

篠部 多分一番初めに作ったのは小1の頃でした。本当に学校に何もなくて、自分達で廃材を集めて作るしかないという状況だったので、まず初めに遊具を作り始めました。一緒に作る仲間を集めて、夏休みになるといっせいに作って、授業が始まっても昼休みにはまた作って……というのをひたすら繰り返してるうちに、それらの時間がものづくりに無中になれる時間に変わっていました。

作り方にこだわりが生まれて、作ったものへの愛着も湧いてきて、気づいたらものづくりに夢中になっていました。

なのめーとる。 秘密基地作りは空間を作るもので、ロボットは実際の物体を作るといった違いがあると思いますが、何か通じるものがあったのでしょうか?

篠部 確かに家とロボットでは作っているものはだいぶ違いますが、実はものづくりをしていて手を動かしてる時間自体が好きではないんです。小さな頃から、どちらかというと意識は「こういう空間デザインにしたら、部屋に入った時にこういう感情になるよな」とか、「ここにドアがあってここに窓があったら、光の差し込み具合がいいよな」とか、「これを使った人がどういう気持ちなのか」っていう、作ることで提供できる体験の方に向いてきました。

それはロボットを作る時も同じで、プログラムを書く時間自体が楽しいわけではないのですが、「こういう技術を使うことで、こういう体験が創出できるんじゃないかな」と考えて作っています。

なのめーとる。 すごく興味深いです。ものづくりが好きで、実際に手を動かすフェーズが好きな方もたくさんいらっしゃる中で、篠部さんはどちらかというとその色々な方に体験を提供できることを想像するワクワクを楽しんでらっしゃるのかなと感じました。

みゆ プログラムを書いている時間自体が楽しいという訳ではないと仰っていましたが、ではプログラミングなどにはどのようなマインドで取り組んでいるんでしょうか?

篠部 多分今は未来を想像することで耐えています(笑)。「この技術を作ってこのシステムを作ったら、こういう未来が待ってるんだよな」とか、「絶対にこの機能があったほうが、使った人の生活が豊かになるよな」というのを考えて、「さあやるか」みたいに自分のケツを叩いている感はありますね。作っているものが完成した未来を考え、妄想しながら作ることがモチベーションになっているのかなと。

なのめーとる。 研究開発以外に、趣味などがあれば教えてください。

篠部 趣味は走ることや料理ですね。高校ではやっていませんが、中学校ではずっと陸上をしていました。足が速い訳ではありませんが、走ること自体が好きです。

なのめーとる。 素敵ですね。走っている間は、どういったことを考えているんでしょうか?

篠部 多分何も考えていません。でも逆に、何か空白になれるからいいのかなと思っています。動画を見て休もうと思っても結局色々考えちゃうし、映画でも考えちゃう。だから走りに行くんです。

なのめーとる。 研究で行き詰まった時も、そうやって走ることでご自身をリセットされている節があるんでしょうか?

篠部 はい。

なのめーとる。 もう一つ挙げてくださった料理についても、教えてください。

篠部 料理はロボットの開発ととても似ていると感じています。いろいろな味やスパイスを自分で入れることによってオリジナルなものができる点が同じです。また、やはり料理の工程自体よりも、「これとこれを調合したらこういう味ができるよな」と考え、実際にどのようになっていくのかを検証することがすごく好きです。料理を好きになったのも、結果や体験を考えることが好きだからかもしれません。

なのめーとる。 興味深いですね。これまで教えてくださったご活動以外に、なさっている活動があれば教えてください。

篠部 自分のロボット開発を軸に、様々な方々に様々なかたちでお世話になっています。最近はあまり行けていませんが、株式会社オリィ研究所でのインタ-ンとして、所長さんの元でものづくりのマインドを教えてもらいながらスタッフとして携わってきました。

なのめーとる。 オリィ研究所に個人的に関心を抱いていたので関連するお話を伺えてうれしいです。それらを通じて、ご自身の研究開発に対する考え方に影響したことはありますか?

篠部 オリィ研究所では、7割の完成度でいいからとにかく発想を現実にする、その速さの重要性を学びました。頭で考え続けるよりも、とりあえず6割や7割のものをたくさん作る、アウトプットの機会を増やすことが、ものづくりとして一番大事な姿勢なんだろうと考えるようになりました。

みゆ  篠部さんは物事をしっかり考えてから行動に移したいタイプの方なのかなと感じていたため、少しギャップを感じました。しっかり考えてから実行に移したい派か、すぐ行動に移したい派か、どちらなんでしょうか?

篠部 まさに僕は元々、割と作り込んでから人に見せたいタイプで、クオリティを細部に求めたいタイプでした。しかし完成度10割で人に見せたものって、返ってくるフィードバックが、良いか悪いかという評価そのものだったりするんですよ。

そこで完成度7割で出すと、それをいかに120%にしようかっていう風に、改善案をアドバイスしてくれる人たちが周りに自然と集まってくる印象があります。確かに自分も、他の人が完成度10割で出したものに対しては、軽々しくああだこうだと言えないけれど、完成度7割で出したものだったら、ブラッシュアップする余地がまだまだある点でアドバイスできる。だから完成度7割で良いから、人に見せる方が成長する。そういうことを身にしみて実感したので、考えが変わりました。

なのめーとる。 私も割と色々考えることによって、アウトプットが遅くなっちゃう傾向があるので、まだブラッシュアップの余地があるタイミングでこまめにアウトプットすることが大事かもなと思いました。今後の進路やビジョンについて、可能な範囲で教えてください。

篠部 2025年4月から、慶應義塾大学の環境情報学部に進学する予定です。そこで取り組みたいと思っているのは、新しいコミュニケーション言語を作ることです。

僕はこれまでずっと離れている人同士が、声という音声情報をやり取りするロボットを作ってきました。しかし作ったものを小児科や老人ホームなどに持っていくと、「生の声が聴こえると、逆に会えない寂しさが増す」と言われてきました。当事者の方々はLINEの音声通話も使いたがらないシーンがあるといいます。この部分は、僕らが考えていることと当事者が感じていることのギャップだと思っています。

そうすると、音声や映像を使ったコミュニケーションではないものが求められる。そこで、新しいコミュニケーション言語を作ろうかと考えるようになりました。

なのめーとる。 新しいコミュニケーション言語として、例えばどういうものをお考えですか?

篠部 例えば僕らが普段一番使ってるコミュニケーション言語は、テキストです。「やっほー」って言って「やっほー」って返ってくる。あとは、スタンプも1つのコミュニケーション言語だと思っています。LINEで「おはよう」って言ったら、おはようという意味合いのスタンプが送られてくる。

これと同じように「振動」をコミュニケーション言語として使いたいなと考えています。言葉ほど分かりやすいものではありませんが、僕が3回ぐらい手を握ったら、それが相手に届いて、相手は僕が3回手を握った感覚を受け取れて、それに握り返すなどして反応する。そのようなかたちで、握る感覚や感触によって、ある意味での「会話」をしていこう、それをゲーム感覚で楽しみ合おう、といったものを今作ろうとしています。

なのめーとる。 確かに振動は相手が生きている証の1つでもあると思うので、その点でもコミュニケーション言語として重要な意味を持ちそうだなと感じました。

みゆ 振動を新たなコミュニケーション言語として選んだ理由を教えてください。

篠部 音声や映像が使えない中で入院中の患者さんの寂しさを解決する糸口を探し、人間以外のコミュニケーションのあり方を調べていた時期がありました。その時に出会ったのが、昆虫のコミュニケーションです。例えばカメムシは、僕らには認識できない振動によって、縄張りを決めたり、求愛行動を取ったりしているといいます。それから「振動がコミュニケーション言語になり得るんだ」という気づきを得ました。そして、これを人間にも応用できるのではないかと思ったのが、振動を使おうと思ったきっかけです。

なのめーとる。 ありがとうございます。将来的には開発を続けていかれるご予定でしょうか?

篠部 開発は続けていきますが、ものづくりだけで終わりたくないので、作ったものを自分たちが使って欲しい患者さんたちに届けるフェーズまでやりたいと考えています。そのための起業や事業化まで見据えてやっていきたいです。

なのめーとる。 とても素敵だと思います。最後に、Larva06の読者に対してメッセージをお願いします。

篠部 自分自身が大事にしてる言葉をメッセージとするのであれば、僕は「武器は走りながら拾え」っていう言葉をすごく大事にしてます。この言葉は、リバネスの井上浄さんがイベントで伝えてくれた言葉です。武器が揃うのを待っていたら、いくら経ってもロボットの開発はスタートしません。しかし「武器を走りながら拾えばいい」というマインドでいくと、その武器を埋めてくれる仲間たちが集まるようになって、研究や開発が加速していくということで、この言葉を自分の活動のモットーにずっとしています。

なのめーとる。 すごく素敵な言葉ですね。私には完璧主義的な面があるので、揃うのを待っていたらなかなか最初の一歩が踏み出せないんですよね。

みゆ 私自身は走りながら足りないものを揃えたいタイプなんですけども、心理学の分野だと、アンケートを取る時に走りながら道具を揃える精神でいくと、「これもやっておけばよかった」と失敗してしまいます。しかしものづくりにおいては「7割でいいから現実的に」ということが重要ということで、分野による違いを実感しました。

なのめーとる。 本日は貴重なお話、ありがとうございました。

篠部 ありがとうございました。

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