研究内容を活かした「先進科学プログラム」により、飛び入学で千葉大学に合格!内藤煌瑛さん研究&受験インタビュー
千葉大学の飛び入学の制度である「先進科学プログラム」を利用し、通常より1年早く大学に進学することになった内藤煌瑛さん。内藤さんが合格した受験方式の詳細や飛び入学に対する考え方、今後の抱負などについてインタビューしました。

なのめーとる。 本日はよろしくお願いします。まず、自己紹介をお願いします。
内藤 AICJ高校2年生(インタビュー当時)の内藤煌瑛です。ウイルスマニアという名前でX(旧Twitter)をしています。最近は他の人の研究を手伝ってばかりであまり自分の研究ができていないのですが、少し前までは記事で出していただいた※1 サル痘の数理モデルやカキに含まれるウイルスの研究をやっていて、数理的な枠組みとして面白い帰結が得られました。その他にも、色々なことを研究してきました。
※1:内藤さんの研究内容の詳細はこちらの記事をご覧ください。
なのめーとる。 早速ですが内藤さんはこの度、飛び入学の制度である「先進科学プログラム※2 」で千葉大学工学部 総合工学科 物質科学コースに合格されたんですよね。おめでとうございます。
※2:「先進科学プログラム」は、千葉大学の先進科学センターが実施している飛び入学の制度。合格者は通常より1年あるいは半年早く大学に入学できるほか、入学後は学部・学科の授業科目と並行して、独自のカリキュラムによる少人数教育を受けることができる。千葉大学は1998年に全国初の飛び入学の入学者を受け入れたことでも知られている。
内藤 ありがとうございます。
なのめーとる。 内藤さんが受験されたのは、どういった受験方式なんでしょうか?
内藤 僕が受験したのは、「研究活動発表型」という2025年度入試から新たに導入され、工学部の物質科学コースのみが募集していた入試方式です。
千葉大学の先進科学プログラムには、大きく4つの受験方式があります(画像参照)。
「方式 I 」と「方式 II 」は好きなこと・打ち込んできた活動があり、通常通り高校生活を3年間送るのではなく、「1年早く大学の内容をやりたい」「早く大学に入ってきちんと学びたい」と考えている人が受けるものです。
対して3つ目の「方式 III」は、国際科学オリンピックの日本代表選手候補者になったことがある人が受ける受験方式です。
4つ目の「総合型選抜方式」は、募集が工学部のデザインコースだけですが、飛び級で通常の高校3年生が受ける総合型選抜と同じ条件で受験できる方式です。
今回僕は、最も早い1月14日に結果が分かる「方式 I 」の中の「研究活動発表型選抜」という入試区分で工学部 総合工学科 物質科学コースを受験し、合格しました。

なのめーとる。 なるほど。飛び入学と一言で言っても様々な方式があるのですね。内藤さんが受験された「方式 I 」について詳しく教えてください。
内藤 千葉大学の飛び級の「方式 I 」にもともとあった「課題論述型選抜」は、数学の課題試験1時間半に加え、物理の課題試験を5時間解くものです。これまでは「方式 I 」で理学部物理学科あるいは工学部 総合工学科 物質科学コースを目指す人は、その物理の課題試験を5時間解く必要がありました。
その「方式 I 」の入試に、数年前から情報・データサイエンス学部 情報・データサイエンス学科の募集が加わりました。これは競技プログラミングで問われるような思考力や問題解決能力が評価されるような入試で、内容は共通テストの情報 I のプログラミングの部分の、難しい版だと思ってもらえればいいです。数学の試験1時間半に加え、その試験を3時間受けるのが、情報・データサイエンス学部 情報・データサイエンス学科の「方式 I 」入試です。
そしてそこに今年度から導入された入試形式が、私が受けた工学部 総合工学科 物質科学コースの「研究活動発表型選抜」です。自然科学ないしは工学分野に関する研究活動の内容について15分間発表し、それに対し質疑応答が15分間行われます。加えて数学の課題試験が1時間半と面接が課されます。順番としては、予め書類を提出しておいた上で、数学と研究活動発表が1日目にあり、1日目の試験を通過した人は2日目の面接を受けることができます。多分先進科学プログラムの中では、比較的通常の総合型選抜と近い入試形態だったのではないでしょうか。
なのめーとる。 会場では1日目に数学の試験と研究活動発表を行い、そこで合格したら2日目に更に面接を受けるのは特徴的ですね。共通テストは課されないんですか?
内藤 課されません。そもそも共通テストの受験資格の問題で、受けたくても受けられないんです。
なのめーとる。 確かに、そうですね。改めてすごいと感じます。ちなみに、内藤さんがこのような入試形式を知ったタイミングはいつ頃だったんですか?
内藤 千葉大学の飛び入学に詳しい友人が、僕におすすめしてくれたのが始まりでした。しかし最初は「飛び入学なんて自分にはできるわけがない」と思い、無視していました。
ただ、高校2年生になったタイミングで、「そろそろ『研究をやりたい』と言っている場合じゃなくなってきた」と受験が差し迫っている危機感にさいなまれ、「受験勉強をしないとまずいのかな」と思うようになりました。僕は普通の勉強が苦手なので、自分がこれまでやってきたことを活かして受験することを考えていました。
また高校1年のときにJapan-UnitedというチームでiGEM 2023という合成生物学の世界大会に出た※3 頃から、自分の研究の方向性が変化していました。現在のウイルスの研究では、ウイルスの種類ごとに分野が細分化されています。例えばインフルエンザウイルスやエボラウイルスなど、種類ごとにそれぞれ専門家がいるイメージです。しかし、例えば電子顕微鏡の開発のような、ウイルス学全体を発展させるような技術というのはなかなかありません。そこで僕は、そのようにウイルス学全体の発展に寄与するような研究開発をしたいと考えるようになりました。
高校2年の始めにそういった変化があった矢先、受験について調べていたら、たまたま2025年度から千葉大学の「方式 I 」に研究活動発表型選抜が加わり、しかも工学部の物質科学コースがその形式で受験生を募集していることを知りました。そこで「え、これ最高じゃん!」と思い、受験しようと思った次第です。
※3:内藤さんは2023年11月に行われた合成生物学の世界大会「iGEM」にJapan-Unitedというチームのメンバーとして参加し、高校生部門の「Grand Prize(最優秀賞)」を受賞した。Japan-Unitedの詳細はこちら。
なのめーとる。 ありがとうございます。ちなみに志望においては、「方式 I 」で飛び入学ができるから千葉大学の物質科学コースを受けようと思ったのか、元々物質科学系に魅力を感じていたのか、どちらが先だったのでしょうか?
内藤 もともと私は、理学部に進むなら物理を、工学部に進むなら物質などのミクロに近いところをやりたいと思っていました。更に物質科学とか、化学・物理のウイルスへの応用をやりたいと思い始めたのが1年ぐらい前からです。そこで、新たに導入される方式があると知り、それがやりたい分野とたまたま重なっていて、マッチしました。だから、どっちが先っていう感じではないんです。
なのめーとる。 なるほど。それは素敵ですね。もう少し、受験の詳しい内容も伺えたらと思います。お話しいただける範囲で構いませんので、面接の雰囲気や試験の難易度について教えてください。
内藤 想像してもらえると分かりやすいのが、「半沢直樹」によくある役員会議です(笑)。銀行員の集まりで、質疑応答とか議論をしているイメージだと思うんですけど、あれがまさに起きていました(笑)。実質、1日目の研究活動発表と2日目の面接で、面接が2回ある感じなんですよ。その2回とも、コの字型の長机に20人強ぐらいの先生方がずらっと座っていました。その前で発表したので、かなり圧迫感がありました。
1日目の数学の試験に関しては、数IIIが範囲に入っていますが、教科書の例題ぐらいのレベルで、ちゃんと勉強している人だったら解ける内容なのでそんなに難しくない感じです。
なのめーとる。 なるほど。研究発表や面接に、手応えはありましたか?
内藤 いえ、手応えは全くありませんでした。研究活動発表で少し失敗があったんです。
研究活動発表のスライド資料は、当初Appendix(付録、補遺)をめちゃめちゃ作り込んでいく予定だったんですけど、研究活動発表のためのスライドの締切が、本当に直前まで知らされていなかったんです。作り始めてはいたんで、締切を知ってからでも間に合いました。
しかし、僕の研究は数学とか物理をウイルスの研究に応用するような研究なので、証明を厳密にやらないといけない部分があり、その証明等はAppendixに載せようと思っていたんです。ただ急いで提出せざるを得なかったことで、それを完全には載せきることができませんでした。数学的な質問が来た時には、証明のスライドがないと、なかなか上手く言語化して説明できないじゃないですか。だから、一応証明はしたんですけどって言っても、「どう証明したの?」と言われ、十分には答えられないことがありました。
また質問の意図が汲み取れなかったこともあり、手応えは本当になくて、1日目の試験が終わった後はものすごい鬱状態でした。僕の実家は神奈川にあるので、受験のために宿泊した千葉駅のホテルで、布団にこもって寝続けました。
なのめーとる。 1日目を通過した人だけが2日目に進むんですよね?通過者に対して、1日目の試験を通過したという通知はいつ知らされるんでしょうか?
内藤 2日目の朝9時半頃ですね。
なのめーとる。 では1日目の夜や2日目の通知までの時間は、落ちたかと思ってヒヤヒヤしそうですね……。
内藤 そうなんです、もう、あの時間は本当に鬱ですよ。もう二度とやりたくない(笑)。
なのめーとる。 お察しします……。ちなみに、受けられた方式は2025年度入試から始まったとのことですが、飛び入学の倍率はどれぐらいなんですか?
内藤 飛び入学の倍率は年や方式によってかなり変わります。今年の「方式 I 」は実際に1日目に数学の試験を受けた人は10人程度で、合格したのは僕1人だったので、それくらいの倍率です。
なのめーとる。 現地で受けた試験の他にあらかじめ書類も提出したとのことですが、内藤さんが受験された方式では、どのような書類が求められましたか?
内藤 1つ目は、学校の先生に書いてもらう推薦書です。
2つ目の自己推薦書では、いくつかの項目それぞれについての記述が求められました。
まず、自分が物理や化学などの分野に対して興味を持った点について1,000文字程度で書くことが求められます。また同じく1,000文字程度で、大学入学後にどのようなことに取り組みたいかについて書く部分があります。
その次に、①自分にとって特別な意味を持った経験について、②個人的あるいは社会的関心事について、③自分に大きな影響を与えた人についてという3つのテーマの中から、1つを選び、500字程度で論述する部分がありました。僕は③を選び、僕の研究スタイルに大きな影響を与えてくださった、古瀬祐気先生について書きました。あとは表彰を受けた経験や、課外活動の経験、在外経験、科学技術コンテスト等での実績などがあれば、それらについて具体的に書く部分があります。またその他に頑張ったことがあれば、その内容を補足資料として提出することができます。僕はここで100ページぐらいの書類を提出しました。これまで論文化しようと思ったけれど、しなかった研究がめっちゃ多かったので、そういった研究十数個を論文っぽい体裁でまとめて提出しました。
最後に3つ目として、1,000文字程度でこれまで行ってきた研究について、800文字程度で物質科学コースを志願する理由を書いた研究活動報告書を提出しました。これは「方式 I 」の研究活動発表型選抜の受験者のみ求められるものです。どちらも好きなだけ書いたので、文字数が若干多めになりました。
なのめーとる。 ありがとうございます。先生に書いてもらうものも含め、色々な種類の書類が求められるんですね。
内藤 はい。推薦書の理科と数学の成績の学年での順位を先生に書いてもらう時に、「テストの成績がひどいけどどうする?」と言われました。僕は定期テストを基本的に適当に受けるタイプなので、成績が本当にひどいんです。先生から「もうちょっとちゃんと学校の勉強やってよ」と怒られました。
なのめーとる。 提出書類は、他の誰かに見てもらって対策をされたんでしょうか?
内藤 受験コーチみたいな方に、いつまでに何を終わらせればいいかを最低限聞いて進めました。僕はスケジュール管理が1番苦手なので、そこだけはちゃんとしたいと思ったからです。
なのめーとる。 面接の練習はどのようにされたんですか?
内藤 面接練習もその方としましたが、想定質問を考える面接対策は自分でもできるので、そんなにやってないです。ただその方に専門的な内容も含めた想定質問を考えていただけたのは、とても有難かったです。
なのめーとる。 ありがとうございます。飛び入学は賛否両方、様々な意見がある入試形式だと思いますが、内藤さん的に「こういう人におすすめしたい」あるいは「こういう人にはあまりおすすめできない」といったご意見があれば、それぞれ教えてください。
内藤 おすすめできる人は、少なくとも学歴とかどうでも良くて、とりあえず早く大学の勉強がしたい、専門的な内容に早く触れたい人です。他には、大学図書館の利用権が早く欲しいなど、大学に所属しないとできないことをしたい人は特に、受けるのはありだと思っています。私はその類で、大学図書館に行くのが趣味なので、申し訳ないんですけど半分以上それが理由かもしれません(笑)。
なので僕みたいに、やりたいことがちゃんとある程度決まってて、学歴にあんまり興味がなくて、それから大学図書館の利用権などが欲しいっていう人にとっては、もう高校で足踏みする必要がないのが1番の激アツポイントだと思うので、さっさと飛び入学をするっていうのもいいんじゃないかなと思います。
ただ飛び入学が向いてない人も勿論いて、例えば科学オリンピックに出る人など、高校の名前をフルで活用したい人達です。科学オリンピックは、高校に所属していないと、国際大会とかに出られないんですよね。だからその枠組みで出ないといけない大会にどうしても出なきゃいけない、もしくは出たいっていう人は多分あんまりこの入試には向いていないと思います。
もっとも、高校2年生まででもう科学オリンピックとかやりたいことをやれるだけやったし、国際大会も出たし、もう十分やったという人は受けてもいいと思います。先程も言いましたが、千葉大学の先進科学プログラムにも、そういう人達向けの「方式 III 」という入試があります。完全に国際科学オリンピックとかに出てる人が受けるための入試なんですが、「方式 III 」の入試は入学が高校3年生の9月の秋飛び入学なんですよ。秋入学という点では海外に近いですね。ただ「方式 III 」は合格率がとても低いですし、そもそも国際科学オリンピックに参加した人が9月から大学に入れたとしてもあまりメリットがないかもしれません。国際科学オリンピックにそれだけ打ち込んだのなら、既存の推薦入試で大学に行けるだろうとも思います。
なのめーとる。 なるほど。千葉大学には、飛び入学で入学した方のみが受けられるプログラムがあるんですよね。
内藤 はい、あります。言い忘れていましたが、その点で特別扱いを受けたい人にもおすすめできます。特典がいくつかあるんですよ。まず1つ目の特典は、入学金が免除されるということです。僕の家はあまり裕福ではないので、これは結構嬉しかったですね。
あとは、海外留学の費用のサポートが受けられます。2025年の夏休みに私も1ヶ月ぐらい行く予定ですが、その留学費用はほとんど全部大学持ちになります。自分で払うお金は多分生活費だけだと思います。
それから、飛び入学の人だけが集まれる学生室があって、そこに机を1つもらえます。大学に専用のスペースがある感じですね。
また飛び入学の人は通常の学生のプログラムとは別に、先進科学プログラムの追加授業を受ける必要があります。これは必須ですが、学びたい人からすると色んな分野に触れることができますし、とてもいい特典です。僕のように、やりたいことはあるけれど、色んな分野を学びながら将来的にやりたいことに応用したいタイプの人には、毎週のように色々な面白い分野の先生を呼んできてセミナーをしてくれるのはありがたいです。
そして飛び入学の人は、自分の興味のある分野について、ゼミ形式で教授と1対1で学ぶこともできるんです。その内容も魅力的で、自分で1週間かけて本を読んで、内容を教授の前でプレゼンします。そこで「どうしてそうなるの?」と突っ込まれたり「ここはこういうものがあるから興味があるんだったら勉強してみな」と教えてもらったり、勉強の仕方も学ぶことができます。このように受けられる特典は多いです。
なのめーとる。 それと並行して一般の学部1年生が受ける授業も受けていくのは、忙しいでしょうが、充実していそうで素敵ですね。
内藤 そうですね。結構忙しいと思います。一番大変だなって思うのは工学部の電気電子工学コースに行く人ですね。千葉大の工学部の中でも電気電子工学コースは、めちゃめちゃ留年率が高く、卒業が難しいんですよ。普通の学部生ですらそうなのに、飛び入学で入った学生はもっとやることが多いため、すごく大変そうだと思います。

Tetora 提出書類の準備はいつ頃から始めて、どれぐらいの時間がかかりましたか?
内藤 11月11日から18日が全ての書類の提出期限で、去年の今頃である2024年3月頭から対策を始めて、期間は長めに取ったつもりです。ただそこから少し精神的に落ち込んでしまって、2,3ヶ月ぐらいほとんど対策ができなかったんです。そこからちょっとずつ回復し、夏ぐらいに本格的に始めました。でも夏からはiGEM 2024のアドバイザーとして忙しくしていたので全くできずに、結局集中してできたのは1ヶ月前とかで、今思うとひどいものでしたね。
ただ、スライドでの研究活動発表に関連する研究は一応ずっとやってたんで、それを含めると、ずっとコンスタントにやり続けていました。受験対策として本格的に集中していた期間としては本当に最後の1ヶ月とかです。
Tetora ありがとうございます。先程千葉大の大学図書館に行きたいというのも、飛び入学で受験した理由というお話をされていましたが、大学図書館の魅力について教えてください。
内藤 今僕は広島に住んでいるのですが、広島だと県立広島大学の大学図書館がよく一般公開をしているので、土日はよくそこに行きます。一番いいのは、良い古書がいっぱいあることです。
もともと生物系の研究をしていた時には気づかなかったんですけど、生物の研究では比較的新しい書籍や論文を重視して進める一方で、数学や物理では、比較的昔の書籍や論文も参照する傾向があります。数学や物理では、一度証明された現象や理論が変わることはほとんどないじゃないですか。だから、古書でもいいものが大量にあるんです。
あとは、古書の匂いや触り心地が好きです。古書の匂いを嗅ぐと集中できます。
そして大学図書館には、絶版になった教科書類が多いんですよね。例えば、『ランダウ=リフシッツ理論論物理学教程』という物理系の人が良く読むシリーズがあるんですけど、今は『力学』と『場の古典論』しか世に出回っていないんです。でも大学図書館に行けば、他のものもある。絶版になった書籍が全然残ってるので、そういうものを読みにいっています。
Tetora 素敵ですね。前の記事の取材では獣医学部に興味があると仰っていましたが、現在はゲノム系や機械を作る方に興味があるとのことでした。具体的にいつ頃から、そちらの方が良いなと思うようになったのか、きっかけを改めてお伺いしたいです。
内藤 iGEMで私が担当したのはドライ関係で、バイオインフォマティクスや数理モデルなどの分野でした。それらの分野は普遍性が高いため、ウイルス一つを調べるのにはあまり適していません。一方もともと私がやりたかったのは、アフリカに行って動物を捕獲して、新しいウイルスを見つけるような、ある種ウイルス学者というよりもウイルスハンターみたいな仕事でした。ただ、ドライの分野を深く学んでいくうちに、ドライの技術はハンターになったらあまり使えないのではないかという思いが生じました。
またさらに普遍的なことを追求するとたどり着く先として、ウイルスの普遍的な原理やウイルスがどうやって生まれたのか、なぜ生まれなければならなかったのか、今後ウイルスはどう進化していくのか、といったところに興味を持つようになりました。個別のウイルスではなく、ウイルスという枠組み全体としてどうなのか、というところに関心が変わったのです。
Tetora その気持ち、分かります。
内藤 数学をやっている人は特に共感していただけるのではないでしょうか。そのように興味が移行したため、個々のウイルスへの興味がなくなったわけではないのですが、少しずれてしまったんです。だから、そろそろXのウイルスマニアという名前も変えた方が良いのかもしれません。マニアックなオタクという感じではなくなってしまったんですよね。
ウイルスに対する愛情は変わらないので、やりたい気持ちは変わらないのですが、個別のウイルスを見ることに今はあまり興味がない状態になりました。
その立場から、ウイルスの研究を全体的に土台から加速させることができる方法は何かと考えた時に、新しい研究手法を作るとか、理論を作るとか、ツールを作るとか、そういったことに尽力した方が、僕が求めるウイルス学の未来が早く手に入るのではないかと考えました。元々は生物的な研究でウイルスの謎を解明したいと思っていたのですが、今は皆ワクチンの方に行ってしまいました。そこで僕がもっと普遍的に効果があり、ワクチン研究に応用できるような技術を一つ作れば、それを皆が使うことができ、ワクチン開発が早く済むのではないか。そうすれば、空いた時間でウイルス学者が、もっと根本的な研究をしてくれるのではないかというところに今は興味があり、そこを目指したいんです。
だから、工学部に行くのが一番良いと考えました。物質科学を選んだのは、化学と物理の両方を学べるからです。生物は本を読んだり、研究室で教授に教えてもらったりしながらでも学べますが、物理や化学はある程度土台が必要となる科目なので、長く触れるほどアドバンテージになります。それを満遍なく、しかも本格的にできるのが物質科学だったので、一番良いなと思いました。
Tetora なるほど。とても興味深いです。ありがとうございます。

なのめーとる。 次に、新たな節目の今、これからの抱負をお聞かせください。
内藤 とりあえず化学がめちゃめちゃ苦手なので、学部生の間にちゃんとできるようにしたいです。あとは色んなことに携われるのが工学部の利点だと思っているので、せっかく工学部に入ったからには色々やりたいなと思っています。学問以外にも、例えば趣味であるプログラミングで、そろそろゲームとかも作れるようになりたいです。最近はZigというプログラミング言語を勉強しながら、Raylibというゲームエンジンみたいなフレームワークをいじっています。
あとは僕、ホロライブのVTuberである、戌神ころねさんがとても好きなんです。受験期にはまっちゃったのは本当に間違いだと思うんですけど(笑)。でも受験期間中に鬱状態から脱却できたのは、戌神さんのおかげで、僕は戌神さんに救われたんです。だからこそ、ホロライブには、二次創作ゲームを公開することができる「holo Indie」というサービスがあるのですが、そこに自分で作ったゲームを出したいと思っています。
研究方面で言うと、とりあえず今やってる研究の論文を大学1年生の間には全部まとめきって、高校でやっていた研究内容に区切りをつけたいです。大学院からはちゃんと技術を持った状態でウイルス系の研究に戻れるようになりたいので、それを目指して頑張ります。
なのめーとる。 ありがとうございます。最後に、Larva06の読者にメッセージをお願いします。
内藤 「みんなも飛び入学を考えてみよう」でしょうか。
多分飛び入学に際して皆さんの多くが危惧しているのは、導入された初期に飛び入学した方が、アカデミアでのキャリア形成で上手くいかなかった話がメディアに取り上げられた件だと思います。そういうキャリア形成の難しさの点で心配になる方もいらっしゃると思います。
ただキャリアの問題は飛び入学をした人じゃなくてもつきまとう問題です。
確かに化け物みたいに賢い飛び入学生の先輩もいっぱいいるんですけど、全員が神みたいに天才という訳ではなく、何か1つが尖ってるという人も沢山います。そういう人たちを見ていると、「将来どうしたいかは漠然と見えているけれど、まずは今を楽しむ」みたいなスタンスの人が結構多く、将来的にそうなっちゃうのは仕方がないのかもしれないとも思います。
たとえ東大の理IIIに行っても行き詰まる人はいるでしょうし、単純にどこに行っても、どれだけ優秀でどれだけ賢い人でも、将来どうなるかなんて分かんないんです。だからこそ、その中でとりあえず今を楽しむのが一番いいと思います。楽しみ方の1つとして、飛び入学があるんじゃないかな。
なのめーとる。 確かに。どんな道を選んでもそういうリスクはつきものなので、どこまでそれに自分で責任を持てるかという問題で、内藤さんはそういったリスクを飛び入学のせいにはしたくないということでしょうか。
内藤 そうなんです。あとは飛び入学をした人達は「研究者になれ」と言われるというデマも流れていますが、正直そんなことはないです。先輩たちがみんな入学時点で研究者になるつもりだったかというと、むしろまだ考え中という人の方が多かったはずなんです。逆に僕みたいに研究者になりたいと決めている人が多い訳ではない。だから、好きなことがある、それでちょっとチャレンジするという程度で受けてもいいんじゃないでしょうか。
なのめーとる。 そうかもしれませんね。
Tetora 自分も今高2なのですが、同学年で自分で行きたいと決めたところに長い時間をかけて、熱意を持って頑張ってきた内藤さんの行動力は凄いと感じました。大学に行っても、引き続き頑張ってください。応援しています。
なのめーとる。 私も応援しています。本日はありがとうございました。
内藤 ありがとうございました。
