高齢者のリモコン紛失を防止する仕掛けを作る!森勇介さん研究インタビュー
高齢者のリモコン紛失を防止する仕掛けを開発している中学3年生(取材時)の森勇介さん。森さんに、研究をしようと思ったきっかけやこれからの進路、その他の活動などについてインタビューしました。

なのめーとる。 自己紹介をお願いします。
森 岡山操山中学校3年生※1 の森勇介です。プログラミングやパソコンを触ること、地理や地図関係のことが好きです。今は、高齢者のリモコン紛失を防止するために、リモコン置き場にリモコンを置くと孫の写真が出てくる仕掛けを作り、高齢者のリモコン紛失を無意識のうちに防止できるという物を作っています。
※1:学年や記事内の情報は2025年1月のインタビュー実施時点のもので、最新のものとは異なる場合があります。
なのめーとる。 開発されている内容についてもう少し詳しく教えてください。
森 主に4つに分かれます。1つ目は、表示する写真を孫が投稿するアプリです。2つ目は、リモコン置き場にリモコンが置かれたことを検知する仕組みです。3つ目は、リモコンが置かれたらそこに写真を表示する仕組みです。4つ目は、リモコンが置かれたら孫に通知を送る仕組みです。
けみぐ 孫がアプリで写真を送るサ-ビスは、アプリとウェブサイトのどちらでしょうか?
森 現在はウェブサイトです。写真を送ると、APIを使ってGoogleドライブ上に保存して、あとでそこから写真を持って来るようにしています。
けみぐ ではデータベースは使わずに完結してるんですね。
なのめーとる。 年配の方のリモコン紛失を防ぐことに注目されたきっかけは何だったんですか?
森 私が普段から物を無くすことが多いのと、母親が高齢者施設に勤めていて、家族と面会をするということや、実際の生活でよく高齢者の方がものを無くすという話を聞いていたので、興味を持ちました。開発を始めたのは2024年の4月です。
なのめーとる。 ありがとうございます。お孫さんに今リモコンを置いたということを通知する機能について伺いたいです。単にリモコンの紛失防止だけではなく、生存確認のような要素もあるのかなと思ったんですが、その辺りはいかがでしょうか?
森 リモコンは毎日使うものなので、通知機能をつけると安否の確認ができると思ってこの機能をつけました。
なのめーとる。 なるほど。ありがとうございます。技術的な点について、どういった技術をそれぞれ使ってるのか詳しくお聞かせいただけますか?
森 写真の投稿はGoogleドライブを使っているので、HTMLで骨組みを作ってJavaScriptで動かす部分を作りました。そして、リモコンを置いたところを検知する仕組みはRaspberry Pi※2を使用し、タクトスイッチが押されたかどうかで判断できるようにしました。写真を表示する仕組みもRaspberry PiとPythonでプログラムを組んでいます。この部分は現在作ってる途中です。通知する仕組みはPythonとLINE Notify※3 のサービスを使ってLINEで通知が来るようにしました。

※2:RaspberryPi ⋯ 手のひらサイズのコンピューター。家庭や教育現場における電子工作などに使用されている。
※3:LINEとwebアプリを連携して、LINEのトーク画面で通知を受け取れるサービス(2025年3月末でサポートが終了した)。
なのめーとる。 それはLINEで特定のアカウントをお子さんに追加していただいて、そのアカウントから通知が来る形ですか?
森 はい。ですが、そのLINE Notifyのサービスが3月末で終了することになってるので、代替の機能を考える必要があります。
なのめーとる。 ありがとうございます。今までの話の中では写真を表示するとのことでしたが、今後それを動画や音楽等まで拡張されていくご予定はありますか?
森 そうですね。今は写真と簡単なGIF画像等だけなので、音声や動きがあった方が高齢者にとっても、一人暮らしの孤独感の解消にも繋がると考えています。
けみぐ 自分も最近Rasperry Piを使っているので、とても興味深いと思います。
森 私もRaspberryPi を使い始めたのは中学1年生の時です。自己紹介の時に申し上げた通り地理や地学にも興味があって、部活に入らない代わりに放課後に理科室に行ってみたところ、そこにRaspberry Piがあって興味を持ちました。
なのめーとる。 地理や地学への興味がきっかけで、RaspberryPiへの興味に繋がったのは興味深いですね。プログラミングや情報系全般に興味を持たれたのはいつ頃でしたか?
森 中学に入る前に友達がやっていた、Scratchというブロックを組み合わせて直感的にプログラミングを勉強できるサイトで遊んでいたのでプログラムや情報自体に興味がありました。サイトを作ったり自分でコードを書いたりするようになったのは中1からです。
なのめーとる。 そういった研究活動の中で、森さんが面白いと感じてる部分について教えてください。
森 物の紛失を防ぐっていう1つの課題を解決する時に「そこに置きなさい」と強制させるよりも無意識のうちに置きたくなるような仕掛けを作るという、この研究の一番僕が伝えたいと思っているそこのアイデアは自分でも面白いと思っています。
なのめーとる。 今の話を伺って、仕掛け学を意識されてるのかなと思ったんですけど、どうなんでしょうか?
森 仕掛け学については、小学校の頃に聞いたことがあり、その置きたくなる仕掛けというのは意識した部分です。
なのめーとる。 ありがとうございます。逆に研究を進めていく中で、苦労されてる部分や難しいと思われている部分があれば教えてください。
森 プログラムの話になってしまうのですが、PythonやJavaScriptを始めたばかりなので、自分のコードが合ってるのかとか、エラーがどうして発生してるのかとかが分からない部分が多くあるので、作ってる途中に困ることはたくさんあります。
なのめーとる。 そういった悩みに直面した時は、どのように解決していますか?
森 自分で調べたり、あとはChatGPTに聞いてみたりしてみているんですが、AIの回答も正解じゃないことが多いので、自分で解決することが多いです。
なのめーとる。 もともとプログラミング自体に関しても割とご自身で学習されてきた感じなのでしょうか?
森 はい。最初にPythonの簡単な構文などは中学校に入った時に先輩に教えてもらったんですが、それからは本を買ったりとか自分でインターネットで調べたりして勉強しました。
けみぐ 自分も最近Pythonをやりたいと思ってるんですが、なかなか最初の1歩が踏み出せずにいます。最初はどのように始められましたか?先輩に聞いて、そこから自分で作りたいものに向かって学習したのですか?
森 1000本ノックというPythonのプログラム集があるので、そこにあるプログラムを自分で進めたら良いよと先輩から言われて、簡単なPythonのやり方はそこで勉強しました。その後はロボットコンテストに出る機会があったので、機械の制御のPythonのプログラムについて勉強して、今この研究でその技術を使っている感じです。色々なものを作りながら、勉強を進めていった感じです。
なのめーとる。 ロボットコンテストに参加されたこともあったのですね。
森 岡山県で毎年開かれている、県内の小中学校や高校が40チームぐらい参加するロボットコンテストで、僕は中2と中3の時に参加しました。コート内にあるブロックなどを定位置に配置して、得点を競い合うものです。

なのめーとる。 今メインでされている研究以外にも色んなことをされてるんですね。先程プログラミング自体に興味を持ったきっかけを教えてくださいましたが、プログラミングや情報系全般の活動を行う中で、その分野のどこが魅力だと思いますか?
森 プログラムはすごく正直で嘘をつかないので、ちょっとしたミスであってもすぐエラーを出してきます。イライラするときもあるんですけど、それを自分で制御できた時の達成感っていうのがあって、それが面白いと思います。
なのめーとる。 そういった時に、気持ちをリフレッシュする方法みたいなものって確立されてたりするんですか?
森 エラーが出てしまう状況っていうのは、頭の中もごちゃごちゃになってるので、一旦1日くらい時間を置いてもう1回やってみると、その解決法が閃いたりします。
なのめーとる。 ありがとうございます。今までお話を伺ってきて、現在のリモコンの紛失に対する解決策としての研究以外に、ロボットコンテストにも出られているとのことでした。
それ以外に趣味等があれば教えてください。
森 中学1年生の時に放課後に理科室に行っていたという話をしましたが、私の学校では部活に入らないような人が好きなことをするために、理科室に集まるような流れがありました。その活動が広がって、中2の時に「SozanLiberalArts」という生徒主体の団体になりました。僕はその団体の運営をしており、月1回、みんなでスライドを作って自分の好きなロボットやプログラムを紹介する、研究発表会のようなものを開催しています。
なのめーとる。 色々なことに興味を持っている生徒で集まって研究発表会やそれぞれの好きな活動をするのは、すごく面白そうですね。今は何人ぐらいの規模なんでしょうか?
森 3年生の運営は私を入れて多い時で10人弱ぐらいで、1、2年生の後輩とこれから運営を引き継ぐ人が合わせて5、6人います。発表会に来たり放課後に理科室に来たりする人は、多い時は80人程度のときもあります。
なのめーとる。 かなり多いですね。運営も大変なのではないかと思います。森さんがその活動に積極的に参加しようと思ったきっかけは何かありましたか?
森 一番大きなきっかけは、ロボットコンテストに参加したことです。ロボコンに参加するに当たってプログラムの勉強をした時に、自分で作ったものを見せたいと思って発表したので、そこからリベラルアーツの活動に大きく関わるようになったと思います。
なのめーとる。 なるほど。ありがとうございます。それ以外に普段の生活の中でされてる趣味等はありますか?
森 地理や地学はすごく好きなので、スマホでGoogleマップを見ながら街中を歩いて、土地の高低とか坂道とかを見て成り立ちを考えたりとか、そういう散歩したりすることが好きです。
なのめーとる。 好きなことについて考えながら散歩をするのは素敵ですね。どういったきっかけで地理とか地学に関心を持たれたんですか?
森 小さい頃から鉄道が好きだったので、地図や路線図を見る機会がたくさんありました。その中で、小学校の頃に鉄道以外の地理についても知りたいと思うようになり、そこから自分で調べたり本を読んだりして興味を持ちました。

なのめーとる。 現時点での開発における課題や今後の展望について教えてください。
森 今はまだ実際に使えるような形にできてないというのが一番大きな課題です。リモコン置き場を自分で作って、全ての仕組みがスムーズに動くように作り上げて、実際に使ってもらう必要があると考えています。
なのめーとる。 ありがとうございます。将来的には実際に使ってもらった人たちから意見を貰って、ユーザビリティ等も踏まえて改善していく、そういったところも見据えていらっしゃるんでしょうか?
森 そうですね。実際に使ってもらって課題がたくさん出ると思うので、そこからまたどんどん改良していきたいと考えてます。ゴールは今のところまだ分かりません。
なのめーとる。 研究のきっかけの点で、ご自身が物をなくしやすいからというのも仰っていたと思います。関連して、リモコン以外にも展開していくご予定はありますか?
森 リモコンという物自体が多分スマートフォン等に置き換わっていくと思うので、スマートフォンや鍵など色んな物に対応できるようにすると、これからも使える機会が増えるのではないかと考えてます。
なのめーとる。 ちなみに、今開発されてるシステムでは、リモコン以外の物をリモコン置き場に置いたらどうなるのですか?
森 今作っている状態だと、リモコン置き場の形をリモコンに合うようにしているため、リモコンのような形の物を置いてしまうと全部反応してしまいます。ただ今後はリモコンにカードをつけて、カードリーダーをリモコン置き場に置いておくことなどにより、特定のリモコン以外には反応しないようにできると考えています。
なのめーとる。 興味深いです。森さんは実際に、開発しているリモコン置き場を生活の中で使われてるんでしょうか?
森 今はまだ学校で作ってる最中なので、家に持って帰って使ったことはまだありません。
なのめーとる。 そうなんですね。これから高校に進学されると思うのですが、その後も今の研究や開発は変わらず続けていかれる予定ですか?
森 そうですね。今使っている機材の多くが学校の備品なので、自分のお金で新しいのを買って、家で開発を続けたいと考えています。
なのめーとる。 ありがとうございます。先日はサイエンスキャッスル※4 に出られていましたが、サイエンスキャッスルについてはどこでお知りになったんですか?
森 放課後の理科室にいる先輩方がサイエンスキャッスルに出て色んな賞を取ったり、そこで色んな人と知り合ったりしていたことで知りました。先輩が、実際に発表会にサイエンスキャッスルで知り合った人を招いているのを見て、自分も出たいなと思いました。
※4:株式会社リバネスが運営する、中高生研究者のための世界最大級の学会。https://s-castle.com/
なのめーとる。 これまで、理科室での取り組みやサイエンスキャッスルへの参加など、様々なことに積極的に取り組まれてきたと思います。その中で、ご自身の開発やロボットコンテストなどの取り組みにおいてプラスになるようなアイデアは得られましたか?
森 そうですね。理科室で会った人やサイエンスキャッスルでお会いした人を発表会に招いて話を聞くみたいなことは今までたくさんあって、自分の研究でも、Googleドライブを使って写真を保存するなどの仕組みはこのサイエンスキャッスル発表会に来てくれた人から得たアイデアなので、たくさん大きな収穫があったと思います。これからも、出られる発表会には積極的に応募して、自分の研究を知ってもらいたいと考えています。
なのめーとる。 ありがとうございます。今後、どういった進路を歩まれるのか、考えていらっしゃることがあれば教えてください。
森 中高一貫校に通っているのでそのまま高校に進学するのですが、そこから主に2つやりたいことがあります。1つ目は今回の研究のようなプログラミングで、2つ目が昔から興味があった地理で迷っている状況です。どの大学に進むかどうかはまだ迷っています。
なのめーとる。 ありがとうございます。最後に、Larva06の読者に一言メッセージをお願いします。
森 私自身「中学生や高校生の時ぐらいしか、自由が利いて自分の好きなことを追求したり、お金についてあまり考えず研究したりすることはできない」とよく色々な人から言われており、私も実感しているので、やりたいなって少しでも思ったら絶対にやった方がいいと思います。やらないで損するよりは、やってちょっと失敗した方が自分にとってはすごい良いことだと思っているので、中学生や高校生の間に好きなことや研究を恐れずにやる事が大事だと思います。
なのめーとる。 ありがとうございます。お話を通じて、森さんが、今の研究課題やこれからやらないといけない事を、冷静に分析されている様子が伝わってきました。また個人的に、2~3年後にどのように研究や開発が進んだか、発展したかをお聞きしたいと感じています。これからどんな方向性に研究や開発が深められていくのか、とても楽しみになりました。本日はお忙しい中ありがとうございました。
森 こちらこそ、ありがとうございました。
けみぐ ありがとうございました。
森さんのX(旧Twitter)アカウントはこちら